作成日:2024/11/08
【体験記】社会保険労務士試験に半年で一発合格した私の学習方法
社会保険労務士法人クリアパートナーズの川畑です。
2024年は10月2日が社会保険労務士試験の合格発表日でしたが、試験や合格発表の時期になると、自分が受験したときのことを毎年思い出します。ありがたいことに、私は今社会保険労務士として仕事をすることができていますので、どうしたら合格できるかのご質問をいただくことがあります。「合格」ということに対する私なりの答えを、古(いにしえ)の合格体験記として、思い出しながらまとめたいと思います。
社会保険労務士を目指したきっかけと学習方法の決め方
私は身内に有資格者がいたことから、社会保険労務士に興味を持ちました。ただ試験内容や合格率を聞き、自分には無理そう、中途半端な学習では合格できないと思っていました。そもそも勉強するということから長年遠ざかっておりましたし、学生時代の体験から導いた自己流の学習法では、合格はとても無理だと思いました。それでもあきらめきれず、予備校などを利用して合格までの最短ルートを辿ろうと考えました。昨日今日で社会保険労務士に興味を持ち始めた自分と、試験問題を研究し合格者を輩出している予備校などはノウハウに大きな差がありますから、私は受験のプロを信じて一発合格を目指すことにしました。
諸々の事情から予備校はやめて自宅学習を選択し、2012年の1月からある企業が提供する通信講座で合格を目指すことにしました。その通信講座のサービスを選択した理由は、社会保険労務士以外の講座を受講した経験があったからでした。あまり深く考えず決めてしまい、他の通信講座との比較もしませんでした。ただ、申し込みをするときに、送られてくる教材はすべて使うこと、学習の流れや受験ノウハウは全面的に通信講座の教材を信じることを決めました。通信講座の内容に従い、送られてくる読み物もすべて目を通していきました。思い込みの激しい性格が幸いし、講師の先生方や合格者は神様のように思え、私はすっかりその通信講座の信者になりました(笑)。
自分に合う学習方法を見つけるまで
しかしながらいくら通信講座の教材を信じていても、実務経験も制度の理解も無かったので、最初はテキストが全く頭に入りませんでした。そこで、ひと通りの法律や制度を把握するため、テキストを全てノートに書き写していきました。音読や黙読よりも私は「書く」ことが一番頭に入ることは分かっていたので、内容や語句が分からなくても深く考えずただひたすらに書きました。正直辛かったですが、私はその通信講座の信者なので写経は当然の行いだと思うことにしました。あっという間に右手が腱鞘炎になりました。
テキストを終えたら問題集を過去問、予想問題を解いていきました。過去問に取り組み始めたのが4月初旬だったと思います。暗記や理解度に対して試験までの残り時間が少ないように感じ不安でしたが、とにかく過去問に挑戦していきました。「当てずっぽうで正解」、「自信を持って正解」、「間違い、もしくは正解だけど全く理解できない」を問題(場合によっては選択肢)ごとに付箋で色分けして解きました。論点を理解できたら付箋を外し、すべての付箋が無くなるまでテキストの確認と問題集を何度も繰り返しました。これはよくある学習テクニックだと思いますが、このテクニックをそのまま実行することが私には難しかったです。どうしても自己流の学習法を試したくなったり、問題を解くのが雑になったり、新しい市販の教材が良く思えて購入したくなったりしました。その度に軌道修正して、不明点や苦手を丁寧にひとつずつ潰していく学習を心がけました。
5月に通信講座の教室講座というものに数日だけ参加しました。大きな教室で講義を受け、予想問題を解いたと思います。毎日自室に籠り学習していましたので、このときに初めて自分以外の受験生に会いました。同じ目標に挑む方々がこんなにいるんだと思うと良い刺激になりましたが、一方で他の受験生が講師に積極的に質問している姿を見て、自分の努力が足りていないような気持ちになりました。大勢と一緒に学ぶことに向いていないと思ったので、教室講座はこの後一度も受講せず、ひたすら自宅学習を進めました。
6・7月は予想問題や模試に挑戦しました。受けるたびに少しずつ得点が上がっていきました。社会保険労務士試験は足切りにならないように得点することが必要ですが、あまりそのことは気にせずに問題を解いて付箋を貼って、テキストを振り返り解けるようになったら外してという流れをひたすらに繰り返しました。何度も間違うときは得意の写経で紙に書いて覚えました。模試の結果は必ず丁寧に見直し、「易」「普通」に判定される問題や他の受験者の正答率が高い問題を間違えている場合は、今後落とさないように理解を深め、「難」の問題は全く分からなくても暗記や理解に時間を費やさないようにしました。一般常識は通信講座のテキストや白書対策の送付物で確認し、厚生労働省のホームページを移動中などに閲覧していました。
直前期の過ごし方と試験当日
8月は試験が迫ってくる精神的な辛さと真夏の暑さに体力を奪われ、しんどい毎日でした。直前の模試でこのまま頑張れば合格できそうというところまで来ていたのですが、逆にその結果がプレッシャーになってしまいました。それでも毎日8時間は学習時間を確保するようにしました。この頃はなぜ社会保険労務士になりたいのかということと、「自分を信じる、これまでの努力を信じる」というようなことを、何度もノートに書いて自分を鼓舞していました。試験前には会場の下見をしっかり行いました(確か通信講座合格者の手記で、下見が重要ということが書いてあったので真似しました)。試験の一週間前には突然食中毒が怖くなり、冷凍食品ばかり食べていました。何とか迎えた試験当日は、チョコレートなどの糖分と食中毒にならないような簡素な昼食を購入して、早めに会場入りしました。まずは元気に試験日を迎え、自分の受験番号の席に座れたことに、ほっとして涙が出そうになりました。そしてこの日まで、これ以上できることはないくらい努力したことを思い出して、昨日の自室と同じように、普段の学習と同じように、試験問題を解こうと思いました。
実は私が受験した2012年は東日本大震災の翌年で、電力不足の影響で午前中が択一式、午後が選択式で、確か集合時間は8時30分だったような気がします。私は朝が得意だったので択一式はかなり集中して問題を解くことができ、午後の選択式も焦ることなく自分のペースで進めることができました。試験結果は合格でした。官報で自分の受験番号を見たときの嬉しさは、今でも覚えています。
最後に
あらためて振り返ると、私は合格できたのは通信講座のおかげだと今でも感謝しています。ただ、他の通信講座でもよかったかもしれませんし、予備校も活用できるのであればすごくいい手段だと思います。これは資格試験に限ったことではありませんが、他人から言われたやり方をそのまま素直に取り入れて努力するということは、実はとても難しいことです。自己流ではなく通信講座の教えに従うと決めたことが、私にとって重要なポイントでした。「合格」を目指すのであれば予備校などが提示する学習方法を素直に行うことが、近道かもしれないと思います。
この体験記に書かれていることは、読んでいただいた皆様にとって当たり前のことばかりかもしれません。でも私にとってはとても大きな努力で、社会保険労務士試験の合格は、人生の転機となる出来事でした。最後に、合格して資格を名乗って仕事をするようになってから分かったことを、ひとつだけお伝えいたします。社会保険労務士は、やりがいのある本当に素晴らしい仕事です。