作成日:2024/11/08
【社会保険労務士が解説】人事担当者必見!厚生労働白書から見る雇用の現状、法改正など政府の取り組みについて
社会保険労務士法人クリアパートナーズ所長の和田です。
今年も8月に厚生労働白書が発表されました。厚生労働白書とは、厚生労働行政の現状や今後の見通しなどについて広く国民に伝えることを目的に、厚生労働省が毎年公表しているものです。
今年の白書は、第1部では「こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に」をテーマに、こころの健康に関する対策や支援の現状および今後の方向性が示されており、第2部は厚生労働省の施策をまとめた構成となっています。
今回は、女性、若者、高齢者等の多様な働き手の参画を中心に、人事の担当者が知っておくと良い雇用の現状、法改正など政府の取組を5つ確認していきます。
人事担当者必見!雇用の現状、法改正など
1 仕事と家庭の両立支援策の推進
仕事と子育てや介護の両立を支援することは、少子高齢化社会における労働者の継続就業や、女性の活躍などを推し進めるだけではなく、日本経済の活力維持の観点からも重要になるとして、政府は仕事と家庭の両立支援に力を入れています。
これまでも育児・介護休業などの制度が整備されてきましたが、男性の育児休業取得率が女性に比べて伸び悩んでいることや、出産・育児により離職する女性が一定数いることなどの現状を踏まえ、さらなる推進が図られています。
2025年4月には、仕事と家庭の両立支援策の一環として、改正育児・介護休業法と改正雇用保険法の施行が予定されています。
2 長寿社会に対応した労働環境の整備
政府は、仕事と家庭の両立支援だけではなく、働く意欲のある高年齢者が生涯現役で活躍できる社会の実現も目指しています。
そのため企業には、高年齢者の雇用の安定を目的に、希望者全員に対し65歳までの雇用を確保する措置(高年齢者雇用確保措置)を講じることが義務付けられています。また、70歳までの就業機会を確保するための措置(高年齢者就業確保措置)についても努力義務とされています。
2023年6月時点で、21人以上規模の企業で高年齢者雇用確保措置を実施している企業は99.9%の一方で、高年齢者就業確保措置を実施している企業は29.7%に留まっています。
3 治療と仕事の両立支援の推進
病気をかかえ通院しながら働く人は、約3人に1人を占めます。定年の延長や高齢化で、病気をかかえながら働く人は今後ますます増えると予想されることから、政府は治療と仕事の両立支援にも力を入れています。
高年齢者や病気をかかえる人であっても、働く意欲や高い能力を持つ人々が、定年や病気で離職することは、企業にとって大きな損失となります。企業は、本人の希望や主治医の意見を聞きながら、希望をすれば働くことができる環境を整えていくことが必要になっています。
4 若者が能力を発揮できる環境の整備
次は、若者の雇用です。若者が能力を有効に発揮できる環境を整備するために、厚生労働省はさまざまな取り組みを行っています。
若者と中小企業とのマッチングを強化するために、若者の採用や育成に積極的で、若者の雇用管理の状況が優良な中小企業をユースエール認定企業として認定し、認定企業の情報発信を行っています。
また、わかものハローワークではフリーターの正社員就職の促進を、地域若者サポートステーションではニート等の職業的自立支援の強化にも取り組んでいます。
若者の雇用は、長期間にわたって就労する人材の獲得と同意ですので、少子化が進む現状において、積極的な若者の雇用は大きなメリットとなると考えられます。
5 就職氷河期世代への集中支援
1993年から2004年頃に卒業を迎えた就職氷河期世代は、バブル経済崩壊後の雇用環境が厳しい時期に就職活動を行った結果、現在でも不本意ながら非正規として雇用されていたり、職に就けていない人もいます。これを踏まえて、政府は2020年から集中的な支援に乗り出しています。
現在ハローワークでは、正規雇用への転換を目指す就職氷河期世代の支援を目的に、就職氷河期世代専門窓口を設置しています。また、企業の就職氷河期世代の正社員雇用を促すために、正社員未経験者や正社員経験が少ない方を正社員として雇用する企業に対して「特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)」の支給を行っています。
6 雇用のセーフティーネットの拡充
雇用保険は、働く人が失業したときや育児休業等を取得したときなどに給付を行い、生活や雇用の安定を図ることが目的とされています。2024年5月には、多様化する働き方やライフスタイルに対応するために、適用要件の拡大、教育訓練などの充実、出生後休業支援給付・育児時短就業給付の創設などを含んだ改正雇用保険法が成立しました。
少子高齢化と労働人口の減少によって人材不足の問題が顕著になってきていますが、雇用環境の整備に積極的に取り組むことで、優秀な人材獲得や人材流出の防止につながります。
最後に
最後に、厚生労働白書では、現在、日本が抱えている問題や政府が力を入れている取り組みが取り上げられています。白書を読むことで、今後どのような問題が生じるのか、どのように対応すればよいのかについて理解を深めることができます。
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