作成日:2024/12/06
【社会保険労務士が解説】高年齢者の雇用について企業が押さえておくべき3つのルールとは
社会保険労務士法人クリアパートナーズ所長の和田です。
働く高齢者の増加で労働災害も増えているとして、厚生労働省は高齢者に配慮した作業環境の整備を企業の努力義務とするという方針で、2025年の通常国会に労働安全衛生法の改正案を提出する予定です。
この努力義務の内容については、事業場内の段差の解消や階段に手すりの設置等のハード面と、定期的な健康診断や体力チェックの実施等が求められます。
※参照:厚生労働省エイジフレンドリーガイドライン
https://www.mhlw.go.jp/content/11300000/000815416.pdf
現在、人手不足を背景に、高齢の労働者は増えており、内閣府が2024年2月に実施した調査によると、60歳未満の現役世代では、生涯を通じた就業意向について全体の7割が60歳以降も働き続けたいと回答しています。
⾼年齢者が活躍できる環境整備を図る法律に、⾼年齢者等の雇⽤の安定等に関する法律があります。 この法律の中で、企業が押さえておきたい3つのルールを紹介します。
企業が押さえておくべき3つのルールとは
1.60歳未満の定年禁⽌(義務)
定年制とは、従業員が就業規則に定められた⼀定の年齢に達したことを理由に、⾃動的に労働契約が終了する制度です。60歳未満の定年年齢を設けることが禁⽌されています。
2.65歳までの⾼年齢者雇⽤確保措置(義務)
⾼年齢者雇⽤確保措置は、従業員が希望すれば65歳までの雇⽤が確保されることを⽬的としています。具体的には、定年を65歳未満に定めている企業に対して、次のいずれかの措置を講じることが義務付けられています。
- 65歳までの定年年齢の引き上げ
- 65歳までの継続再雇用制度の導入
- 定年の廃止
2023年の⾼年齢者雇⽤状況等報告の集計結果によれば、21⼈以上規模の企業のうち、2の「65歳までの継続再雇用制度」を導入されている企業が7割近くとなっていますが、定年の引き上げをされる企業も増えてきています。
3.70歳までの⾼年齢者就業確保措置(努⼒義務)
個々の労働者の多様な特性やニーズを踏まえ、70歳までの就業機会を確保することを⽬的として、定年を65歳以上70歳未満に定めている企業および65歳までの継続雇⽤制度(70歳以上まで引き続き雇⽤する制度を除く。)を導⼊している企業は、次のいずれかの措置を講じることが努⼒義務とされています。
- 70歳までの定年年齢の引き上げ
- 70歳までの継続再雇用制度の導入
- 定年の廃止
- 70歳まで継続的に業務委託契約を締結できる制度の導入
- 70歳まで継続的に事業主自ら実施、もしくは事業主が委託・出資等をする団体が実施する社会貢献事業に従事できる制度の導入
なお、2023年の⾼年齢者雇⽤状況等報告の集計結果によれば、70歳までの⾼年齢者就業確保措置の実施済み割合は、21⼈以上規模の企業のうち、3割程度となっています。
最後に
最後に高年齢雇用継続給付の縮小についてです。現在、⾼年齢雇⽤継続給付は、60歳時点の賃⾦額を基準に各⽉の賃⾦の低下率に応じて、最⼤15%が給付されています。 しかし、 2025年4⽉1⽇から新たに60歳を迎える労働者(受給資格要件を満たす⽅)は、賃⾦の低下率に応じた給付率が最⼤10%へ縮⼩されます。
⾼年齢雇⽤継続給付の縮⼩にともない、⾼年齢者のモチベーション低下が懸念されますので、⾼年齢者の就業意欲を⾼めるために、⾼年齢者の能⼒、知識、経験などが⼗分に活かせる職域の拡⼤や、⾼年齢者の職業能⼒を評価する仕組みや制度の整備を進めることが重要になってきます。
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