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労務コラム
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作成日:2026/03/04
【社会保険労務士が解説】企業に求められる安全配慮義務について

 社会保険労務士法人クリアパートナーズ所長の和田です。

 企業には従業員が安全かつ健康に働ける職場環境を整える責任を負っています。その根幹となるのが安全配慮義務になります。今回は、安全配慮義務の概要や事例、企業の対応方法について解説します。





▼この記事を書いた人
代表社員 和田 稔(Wada Minoru)
早稲田大学教育学部卒業。大学卒業後、約17年間大手企業にて店舗業務や婦人服の商品企画などの社会人経験を積み、その後社会保険労務士の道へ。令和2年に社会保険労務士法人クリアパートナーズを設立。一般企業での経験を活かし、幅広い業種・職種・企業規模のお客様のご支援実績多数あり。
 

 

5つの具体的な事例と防止対策

 安全配慮義務とは、従業員の生命や身体の安全、心身の健康などを確保して働けるよう配慮する義務のことです。職場での労働災害を未然に防ぐための、安全衛生管理上の義務ともいえます。(労働契約法第5条) 


 安全配慮義務違反の具体的な事例と防止対策を挙げていきます。以下の@〜Bは、安全配慮義務違反となるよく見るケースですが、CとDは、働き方や環境の変化によって、新たに安全配慮義務違反とならないように気を付けなければならないケースになります。
 
@ 事故・災害
 製麺会社で働く従業員が製麺機に左手を巻き込まれて骨折した事例です。製麺機の刃にカバーをかぶせるなどの対策を行っていなかったことや、製麺機の危険性について十分な教育を行っていなかったことから、安全配慮義務の違反が認められました。なお損害賠償については、従業員側にも落ち度があるなどの事情も考慮されたため、従業員の過失割合が3割と認定され、企業は損害額の7割の賠償責任を負うこととなりました。
 対策としては、機械に安全装置を取り付け誤操作による事故を防ぐこと、機械のメンテナンスを定期的に行うこと、正しい操作方法の教育を行うことなどが挙げられます。
 
A 過重労働
 月100時間を超える時間外労働が継続して行われていた事例です。実際に疾病を発症しているかは別にして、長期間に渡り長時間労働をさせているにもかかわらず、労働時間の減少のための対策を講じなかったことによる責任です。一般的に、過重労働による安全配慮については、従業員に何らかの病気や精神障害などが発症し、その要因が長時間労働であると判断されたことにより義務違反が認められますが、疾病の発症が判断基準とはならないケースもあります。なお過労死ラインとは「2〜6か月の平均残業時間が80時間超」「1か月の残業時間が100時間超」の水準となります。
 長時間労働が従業員の健康に危険を及ぼすことは周知の事実ですので、企業による労働時間の管理や長時間労働などの対策は非常に重要です。
 対策としては、勤怠管理システム等を利用して労働時間を把握すること、勤務間インターバル制度を導入すること、自宅へ資料の持ち帰りを禁止することなどが挙げられます。
 
B ハラスメント
 暴言や暴行などのパワーハラスメントを受けて後遺症が残った事例です。ある従業員がパワーハラスメントを受けていることを上司が認識しているにもかかわらず、企業が何の対応も行わなかったことに対して、安全配慮義務の違反が認められました。
 対策としては、ハラスメント防止に関する研修を行うこと、管理監督者に対してハラスメント発生時の対応について研修を行うこと、ハラスメントの相談窓口を設置して全従業員に周知することが挙げられます。
 
C 在宅勤務
 在宅勤務を導入されている企業が増えていますが、在宅勤務時には直接従業員の様子を確認できないため、労働時間の管理が難しく、労働時間が長時間になる傾向があります。労働時間の管理が不完全であったり、長時間労働による心身の不調が見られた場合、安全配慮義務違反となる可能性があります。
 対策としては、在宅勤務時の時間外労働、深夜労働、休日労働は原則禁止すること、業務に関するメールも時間外・深夜・休日は原則禁止すること、長時間労働について注意喚起を行っても改善しない従業員は在宅勤務を取り消すことが挙げられます。

D 副業・兼業
 従業員の副業や兼業を認めている企業では、副業や兼業先での労働時間も考慮する必要があります。特に従業員が個人事業主として事業を行っている場合、兼業については注意が必要です。個人事業主は労働基準法が適用されないため法定労働時間の問題は生じません。そのため個人事業主として兼業している従業員への配慮は不要と考えられがちですが、企業はその従業員を雇用している以上、心身の疲労など健康への安全配慮を行わなければなりません。
 対策としては、本業に支障をきたす副業・兼業は認めないこと、従業員に定期的に勤務状況などを報告させること(特に個人事業主の場合)、自身の健康を維持できるように自己管理を促すことが挙げられます。


ストレスチェックの義務化について

 ストレスチェックは、従業員の心理的負担の程度を把握し、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的とする制度です。単に実施すればよいというものではなく、実施後の対応が重要になります。
 
 例えば、以下のような場合には安全配慮義務違反と判断される可能性があります。
  • 高ストレス者と判定された従業員から面接指導の申出があったにもかかわらず、適切な対応を行わなかった
  • ストレスチェックの結果を組織改善に活用せず、長時間労働やハラスメントを放置した
  • 制度自体を形だけ導入し、実質的に機能させていない
 
 ストレスチェック制度は、単なる法令対応ではなく、企業が安全配慮義務を果たすための重要な仕組みです。現在は従業員数50人以上の事業所で義務化されていますが、近い将来、すべての事象所でも実施が義務化されますので、早めに体制を整えておくことが望ましいです。
 

最後に

 最後に、安全配慮義務を怠ったときの罰則についてです。労働安全衛生法には、従業員の安全と健康を守るために企業が取り組まなければならない義務などが定められています。義務を怠った場合には以下の罰則があります。
 
【労働安全衛生法による罰則】
  •  危険な健康被害の防止措置を講じていない ⇒ 6か月以下の懲役、または50万円以下の罰金
  •  安全衛生教育を実施しなかった ⇒ 50万円以下の罰金 

 安全配慮義務違反による罰則が適用されなかったとしても、必ずしも民事上の損害賠償責任がないとは言えません。実際に数千万規模の損害賠償が命じられたケースもあります。また、違反を問われるような状況が起きれば、従業員だけではなく企業の社会的信頼も失いかねません。メンタルヘルスに関する社内相談窓口の設置や、従業員50人未満の事業所でも産業医を選任するなどして、安全配慮義務違反を防ぐための対策を講じましょう。
 就業規則の見直し、ハラスメント対応、労働時間の管理方法など、気になる点やお困りごとがありましたら、お気軽にお問合せください。
 


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