作成日:2025/01/17
【社会保険労務士が解説】『労働基準法』が適用されないケースについて
社会保険労務士法人クリアパートナーズ所長の和田です。
今回は『労働基準法』が適用されないケースについて解説します。
労働基準法とは
はじめに『労働基準法』は、労働者の賃金や就業時間、休日・休憩など、労働条件の原則や基準を定めた法律です。使用者と労働者は対等な関係であるべきですが、経済的な力関係によって不平等になってしまう可能性が高いことから、法律によって最低限の基準が定められています。
『労働基準法』は1947年に施行されました。その前身は1916年に施工された『工場法』になります。その後、時代の変化に合わせて何度も改正を繰り返し、現在の形になりました。
『労働基準法』は労働者を守るための法律で、賃金の支払い方法や労働時間、休日の付与などについて、細かく規定されています。例えば、賃金は原則として、通貨で直接労働者に全額を毎月1回以上、一定の期日を定めて支払う必要がありますし、労働時間は原則として休憩時間を除いて1日8時間、1週間に40時間以内です。休日については、最低1週間に1日、もしくは4週間を通じて4日以上は取得する必要があります。その他に、休憩時間、割増賃金、年次有給休暇、解雇、退職などについて規定されており、正社員、契約社員、パートやアルバイトといった名称を問わず、すべての労働者に『労働基準法』は適用されます。
労働基準法が適用されないケースについて
ただし、労働基準法第41条によって『管理監督者』は、労働時間、休憩・休日の規定から除外されます。管理監督者とは、労働条件の決定や労務管理などにおいて、経営者と一体的な立場にある者と定義されています。
少し前の話ですが、実際にはほとんど裁量権のない者を管理監督者とする「名ばかり管理職」が社会問題になりました。「部長」「店長」「工場長」などの役職とすれば自動的に管理監督者となるわけではありません。自身の出退勤に裁量権があり、その地位にふさわしい待遇が与えられていることが最低でも必要になります。
管理監督者以外では、秘書など経営者や管理監督者の活動と密接に結びついている『機密の事務を取り扱う者』と、管理人など『監視や断続的業務に従事する者』も労働時間や休憩・休日の規定から除外されます。なお『監視や断続的業務に従事する者』を適用除外にするためには、労働基準監督署長の許可を受けなければなりません。
ここで注意したいのは、労働基準法第41条で適用が除外されるのは、労働時間や休憩・休日の規定のみですので、深夜労働や年次有給休暇の規定など、それ以外の労働基準法の規定は適用されます。給与計算時に残業代の計上はなくても、深夜割増については計上しなくてはなりません。
その他に事業を共に行なっている『同居の親族』と、家事一般に従事する『家事使用人』については、労働基準法のすべてが適用除外になります。同居の親族に関しては、公私ともに経営上の利害が一致しているため、一般的な労使関係に当てはめることができないことが適用除外の理由です。
ただし、同居の親族に加えて、1人でも他人を雇用している場合、その事業所自体については労働者が在籍していますので労働基準法は適用されます。その場合でも、原則として同居の親族は労働基準法が適用されません。同居の親族が労働者として認められるためには、通常の労働者同様に事業主の指揮命令に従っているのが明確であり、就労の実態があり、賃金もこれに応じて支払われていることが必要です。これらをクリアすることで労働保険(労災保険&雇用保険)の適用を受けることが可能になります。
その他では『船員』は原則として労働基準法の適用除外となります。また農業、畜産業、水産業に従事する者は、労働基準法第41条により、労働時間、休憩・休日の規定から除外されます。
最後に
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