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作成日:2025/03/14
【社会保険労務士が解説】令和7年4月改正!介護に伴う離職防止のための企業の義務について
社会保険労務士法人クリアパートナーズ所長の和田です。
 2025年4月に育児・介護休業法が改正されます。介護に関する改定については「介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等」がポイントになります。現在、介護による離職者は年間10万人程度となっており、仕事をしながら介護をする従業員は、2030年には300万人を超えると見込まれています。高齢化が進んだ世の中ですので、介護についての負担や不安を抱える従業員の方も多いと思います。今回の法改正をうけて、介護に伴う離職を防止するための企業の義務について解説します。
 

具体的な改正点とは

今回の「介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等」は具体的には次の4項目になります。
1.介護休暇を取得できる従業員の要件緩和
2.介護離職防止のための雇用環境整備
3.介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
4.介護のためのテレワーク導入
 この中で「2.介護離職防止のための雇用環境整備」について具体的な措置の内容を挙げて解説します。
 

企業が講ずべき措置について

 介護の問題に直面した従業員から、介護休業の取得や、介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるため、企業は次の4つのうちいずれかの措置を講じなければなりません。また複数の措置を講じることが望ましいとされています。現在、介護に従事している従業員がいない場合でも、すべての企業で環境整備を行う必要があります。
 なお介護両立支援制度等とは、介護休暇に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、時間外労働の制限に関する制度、深夜業の制限に関する制度、介護のための所定労働時間の短縮等の措置を指します。

@介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
 原則として全従業員に実施することが望ましいです。少なくとも管理職には実施してください。研修の内容については、介護に対する事前の心構え、介護両立支援制度を活用した働き方の見直し等が挙げられます。
 
A介護休業・介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口設置)
 人事部や総務部などに相談窓口を設置して、全従業員にいつでも相談できることを周知します。相談窓口には、介護休業・介護両立支援制度等に関する知識を持つ担当者をおいてください。
※厚生労働省作成のチェックリスト(https://www.mhlw.go.jp/content/000898378.pdf)
 
B自社における介護休業取得・介護両立支援制度等の利用の事例の収集・提供
 自社の従業員の介護両立支援制度の活用事例について、社内で情報を共有します。介護休業・介護両立支援制度等の活用と介護保険サービス等を組み合わせた事例は、これから介護をおこなう従業員には参考になります。
 
C介護休業・介護両立支援制度等の利用促進に関する方針の周知
 介護休業・介護両立支援制度等の利用促進について、企業としての方針を従業員に周知します。社長が自らの言葉で「我が社では介護を理由とした離職はゼロにする」という目標を掲げることは大切だと思います。
  

最後に

 介護はすべての従業員に可能性があり、突然対応が必要になる場合もあります。ただ実際に介護が必要にならないかぎり、なかなか自分のこととして考えることは難しいです。そのため介護と仕事を両立するための制度があることや、介護保険サービスが受けられることを知らない従業員も多いと思います。企業にとっても、人材不足が深刻化している中で、実績・経験豊富な従業員が介護離職となると影響が大きいです。今回の法律改定は、介護離職の無い雇用環境の整備に本気で取り組むチャンスと捉えると良いでしょう。
 気になる点やお困りごとがありましたら、お気軽にお問い合わせください。