作成日:2025/04/25
【社会保険労務士が解説】36協定に関する基礎知識や運用上の注意点について
社会保険労務士法人クリアパートナーズ所長の和田です。
今回は、36協定に関する基礎知識や運用上の注意点についてお伝えします。
36協定とは
一般的に36(サブロク)協定と呼称される労委協定ですが、その呼び名の由来は労働基準法第36条に基づきます。企業が従業員に法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて時間外や休日労働をさせる際に必要な労使協定です。過半数労働組合または過半数代表者と締結し、労働基準監督署へ届け出ることではじめて効力を持ち、1日8時間、週40時間以上勤務しても法律違反とはなりません(時間外・休日労働が免罰となります)。
36協定を締結したからと言って、時間外・休日労働を義務化するものではないため、実際に時間外労働を行うには、就業規則や労働契約での定めも必要です。36協定は年1回の締結および労働基準監督署への届出が基本で、従業員への周知も義務づけられています。
時間外労働と休日労働の違い
労働基準法上の時間外労働は法定労働時間を超える労働、休日労働は法定休日に働くことをさします。企業が定める所定労働時間とは異なる場合があり、所定時間を超えても法定内であれば割増賃金の支払義務はありません。(例:1日の所定労働時間が7時間45分の場合で、7時間45分を超えて8時間までの15分)ただし、賃金規定等で独自に支払う規則を設けている場合や、慣習的に割増賃金を支給している場合は、その運用通りになります。
時間外労働の上限規制
働き方改革関連法により、時間外労働には罰則付きの上限が設けられています。原則として月45時間・年360時間以内ですが、臨時的な特別の事情があり労使で合意すれば、特別条項により延長が可能です。
・特別条項の上限
年720時間以内
月100時間未満(休日労働を含む)
月45時間超は年6回まで
複数月平均(2〜6ヶ月)で月80時間以内
違反時の罰則
36協定の届出をせずに時間外労働をさせた場合、または協定で定めた時間を超えた労働をさせた場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。企業名の公表の可能性もあります。
36協定の作成と注意点
36協定(特別条項含む)には以下の内容を記載します。
・有効期間、起算日
・業務の種類と対象従業員数
・時間外・休日労働の必要な理由
・延長時間(1日・月・年単位)
さらに理由・時間・回数・健康措置内容などの記載が必要になります。「業務上必要」などの抽象的な理由は不適切とされており、具体的な理由(例:納期のひっ迫、クレーム対応、決算対応等々)の明記が必要です。
過半数代表者の選出方法
労働組合がない場合、従業員の過半数代表者を民主的な方法(投票・挙手など)で選出します。企業側が指名することは認められておらず、適正な手続きを経ない代表者との協定は無効となります。なお過半数代表者の決定の過程に関するエビデンスは残しておいてください。
従業員の健康への配慮と企業の責任
長時間労働は健康リスクと関連しており、月45時間を超えるとリスクが高まり、月100時間や複数月平均で80時間を超えると、脳・心臓疾患のリスクがさらに増加します。年1回の36協定の届出を、働き方の見直しの機会として活用することが望まれます。
〜出典:厚生労働省・36協定に関するガイドライン〜
最後に
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