作成日:2025/07/04
【社会保険労務士が解説】労務トラブルを防ぐ!アルバイト採用で整えておきたい書類一覧と労務対応のポイント
社会保険労務士法人クリアパートナーズ所長の和田です。
人手不足や繁忙期への対応として、アルバイトの採用は多くの企業で行われています。まもなく夏休みになりますので、学生アルバイトを雇用する企業も増えてきます。
アルバイトの労務管理についても、正社員と同様に労働基準法やその他の労働関係法令が適用されるため、採用時から適切な手続きを踏まないと、後々トラブルに発展するリスクがあります。
今回は、アルバイトを採用する際に、最低限整えておくべき書類や労務対応について、実務的な視点で解説します。
1.アルバイトの採用にも、労働条件通知書の明示は義務
労働基準法第15条により、使用者は労働者を雇い入れる際に労働条件を明示する義務があります。アルバイトであってもこの規定は適用され、特に下記の事項は書面(または電子メール等)での明示が必要です。
- 契約期間
- 就業の場所と従事する業務
- 始業・終業時刻、所定労働時間、休憩、休日
- 賃金の決定・支払方法・締切日・支払日
- 解雇・退職に関する事項
なお、労働条件通知書だけでも法的要件はクリアしていますが、雇用契約書として双方が署名した書類を残しておくと、トラブル防止に有効です。
2.雇用保険・社会保険の加入要否の確認
アルバイトでも、労働時間や勤務日数の労働条件によって、社会保険や雇用保険の加入義務が生じます。
- 労災保険:1日だけの勤務としても、すべての労働者が加入
- 雇用保険:週20時間以上勤務し、31日以上の雇用見込みがある場合に加入(昼間学生は被保険者にならないケースがあります)
- 社会保険(健康保険・厚生年金):原則として、週30時間以上勤務の場合に加入(従業員数が51人以上の企業では、週20時間以上でも加入対象となるケースがあります)
加入対象であるにも関わらず未加入のままにしていると、後日さかのぼって保険料を徴収されるリスクがあります。
3.労働時間・休憩・残業の管理
アルバイトにも、労働基準法に基づく労働時間や休憩時間の規定が適用されます。
- 労働時間の記録(タイムカード等)を適切に行うこと
- 1日8時間、週40時間を超える労働には割増賃金(残業代)の支払いが必要
- 6時間超の労働には45分以上、8時間超には1時間以上の休憩が必要
採用時に、就業規則や労働契約書で、所定労働時間や残業の有無を明示しておくことをお勧めします。
4.その他取り交わすことが望ましい書類
アルバイトの雇用に際し、それぞれの企業独自の判断で交わすことが望ましい書類もあります。
- 身元保証書:備品の破損や金銭管理が伴う業務に従事する場合
- 誓約書:機密保持や副業禁止などについての合意が必要な場合
これらは法的に必須な書類ではありませんが、牽制効果があり、万が一のトラブルに備えて取り交わしておくと安心です。
5.就業規則の適用範囲の確認
アルバイトに就業規則を適用する場合は、適用範囲を明記しておくことが重要です。また、パートタイム労働法に基づき、正社員との待遇差について説明責任がある点にも注意が必要です。
最後に
アルバイトの採用時にも、正社員と同様の労務対応が求められます。必要な書類の整備と適切な手続きを行うことで、法令遵守とともに、トラブルの予防につながります。
気になる点やお困りごとがありましたら、お気軽にお問合せください。