作成日:2025/07/04
【事例紹介】無断欠勤が続く社員にどう対応すべきか?“解雇できない”リスクと正しい手順
「連絡なしに欠勤が続いていて、こちらから何度も連絡しているのに出ない。どうすればいいのか…」
「注意しても改善せず、職場の士気も下がっている。このまま雇い続けるのも限界…」
このような“問題社員”に関するご相談は、企業規模を問わず日々多く寄せられています。
特に「無断欠勤」は放置すれば社内秩序を乱すだけでなく、対応を誤ると不当解雇とされ、トラブルや金銭的なリスクに発展するおそれがあります。
今回は、【IT業(従業員30名)】の企業様の事例をもとに、「どう対応すればよかったのか」「注意点はどこか」を解説します。
【事例紹介】IT業・従業員30名|無断欠勤3日から始まった混乱
◯背景:まじめな社員だったが突然…
ある従業員Aさん(入社3年目、30代男性)は、以前は真面目で勤務態度も良好でしたが、ある日を境に連絡もなく無断で欠勤。その後も連絡はつかず、出勤もなし。人事から電話・メール・LINEで複数回連絡しても反応なしのまま3日、5日、7日と経過しました。
一方、Aさんの部署ではシフトや工程に影響が出始め、他の社員からも不満が噴出。
上司や人事部も「懲戒処分にするべきでは?」と考え始めました。
【対応プロセス】社労士として支援した3つのステップ
【Step1】「記録を残す」ことから始める
企業側がまず行うべきは、「注意・連絡・状況」などすべてを記録することです。
- 連絡手段(電話・メール・SNSなど)とその日時
- 内容(何を伝え、相手が何と言ったか/反応があったか)
- 出勤予定と実績、欠勤が業務に与えた影響
- 本人からの報告があった場合はその内容
この記録は、「企業が誠実に対応したことの証拠」になります。
後から「突然解雇された」「連絡がなかった」と主張されたときに、証拠がなければ企業側が不利になることもあります。
【Step2】「書面での通知」と「出勤指示」
次に、本人の連絡が取れない状態が続いたため、会社名義で「出勤指示書」を書面で郵送しました(特定記録郵便・内容証明郵便)。
- ○月○日から○日間、連絡なしの欠勤が続いている
- 無断欠勤は就業規則違反であり、今後の就業継続に大きく影響する
- ○月○日までに連絡がなければ、懲戒処分の検討に入る可能性がある
などを、冷静かつ事実ベースで記載します。この文書もまた、万が一のトラブルに備えた「企業の誠実な姿勢を示す証拠」になります。
【Step3】復職後のヒアリングと処分の判断
結果的に、郵送から数日後、Aさんから連絡がありました。
内容は「体調が悪く、動けなかった。精神的にも限界だった」とのことで、医師の診断書が提出されました。
この時点で会社としては、「職場放棄」による即時解雇などは行わず、まずは産業医と連携した面談を実施。
メンタル不調の診断を受けていたため、休職扱いとし、復職支援の方針に切り替えました。
あわせて、今後このような対応が円滑に進むよう、以下の対策を進めました。
- 無断欠勤時のルールを就業規則に明記(〇日で懲戒対象など)
- 休職・復職の判断プロセスを制度化
- 連絡不通時の手順と対応フローの社内マニュアル化
【ポイント解説】「解雇ありき」で動くと危険
重要なポイントは、「連絡がつかない=即解雇」ではないという点です。
特に、メンタル不調が絡むケースは、労働者側の保護が強く、「不当解雇」とされやすい状況にあります。
企業がとるべき対応は、下記の通りです。
- 感情ではなく、記録・事実に基づいた判断をする
- 出勤指示やヒアリングのプロセスを経た上での判断をする
- 懲戒処分・解雇の場合は、必ず就業規則との整合性と合理性があるかの確認をする
実際、相談が早ければ早いほど、傷が浅く済むケースがほとんどです。
【社労士からのアドバイス】トラブルは“仕組み”で防げる
無断欠勤や問題社員対応で重要なポイントは、「感情」ではなく「体制」です。
- 曖昧な就業規則
- 出勤指示が口頭のみ
- 書面記録がない
- 社内で対応がバラバラ
このような状態では、どのような正当な処分も、あとからトラブルに発展しかねません。
私たちは、就業規則や懲戒規定の整備/対応記録のサポート/復職支援のアドバイスまで、企業に寄り添った形で支援を行っています。
【おわりに】まずは「社内の体制チェック」から始めてみませんか?
無断欠勤が起きた時、対応の誤りは後から重くのしかかります。
適切な対応体制が整っていれば、「毅然と、かつ冷静に」社員と向き合うことができます。
「このケースはどう判断すべきか」「どこまで注意できるのか」など、気になる点やお困りごとがありましたら、お気軽にお問合せください。