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作成日:2025/10/31
労働者代表者の適正な選出方法とは【社会保険労務士が解説】
 社会保険労務士法人クリアパートナーズ所長の和田です。
 先日、就業規則を変更する際に、労働者代表者の適正な選出を行わず、意見を聴取しなかったとして、ある法人が書類送検されたというニュースがありました。併せて、36協定についても無効という判断がされました。
 労働者代表者について、間違った選出方法や形式的に選出してしまうと協定自体が無効となるリスクがあります。
 今回は、労働者代表者の適正な選出方法や注意点について解説します。
 





▼この記事を書いた人
代表社員 和田 稔(Wada Minoru)
早稲田大学教育学部卒業。大学卒業後、約17年間大手企業にて店舗業務や婦人服の商品企画などの社会人経験を積み、その後社会保険労務士の道へ。令和2年に社会保険労務士法人クリアパートナーズを設立。一般企業での経験を活かし、幅広い業種・職種・企業規模のお客様のご支援実績多数あり。



1. 労働者代表者とは

 労働基準法では、会社と従業員との協議・合意が必要となる場面において、全従業員の代表として意見を述べたり、書面で同意する立場の者を「労働者の過半数を代表する者(以下「労働者代表者」)」といいます。

一例として、次のような場面で労働者代表者の選出が必要になります。
  • 時間外・休日労働に関する協定(いわゆる36協定)の締結
  • 就業規則の作成・変更に関する意見聴取
  • 変形労働時間制(1か月単位・1年単位など)に関する協定の締結
  • 年次有給休暇の計画的付与制度の導入に関する協定の締結
  • 賃金控除に関する協定(社宅・組合費など)の締結 ・・・等々
 このように、労働者代表者は会社と従業員の「橋渡し」となる重要な役割を担います。
 
 

2. 選出の要件と注意点

 労働者代表者は、会社が指名することや、特定の候補者を推すことはできません。以下の3点が選出の基本要件とされています。
 
@労働基準法上の「労働者」であること
 管理監督者(店長・部長など労働時間の適用除外者)や派遣元の社員などは原則として対象外で、事業場の従業員の中から選出します。
 
A過半数労働組合が存在しない場合は、「労働者代表者」を選出すること
 事業場に労働組合がある場合、その組合が自動的に代表者となります。
 労働組合がない場合には、従業員の過半数を代表する者を選出します。
 
B民主的な方法で選出されること
 投票、挙手、持ち回り署名など、従業員の自由な意思表示に基づく手続きであることが求められます。会社が候補者を指定したり、意見を制限することはできません。

 

3. 選出手続きの流れ

 
一般的な選出時の流れについては下記の通りです。
  • 選出告知
    •  「労働者代表者の選出を行う旨」「対象者」「方法」「期間」を掲示または社内通知で明示します。最近では、全従業員へ向けてメール送信で通知することが多いです。
  • 立候補・推薦の受付
    • 立候補または推薦を受け、候補者を確定します。
  • 投票・合意形成
    • 秘密投票・挙手・書面同意など、民主的な方法で過半数の支持を得た者を決定します。
  • 結果の公示
    • 選出結果(労働者代表者名・任期・選出日)を全従業員に周知します。
  • 選出記録の保存
    • 選出の過程・方法・結果を記録し、36協定や就業規則意見書とともに保存しておいてください。労働基準監督署の調査で記録の提示を求められるケースは多いです。
  

4. 任期と解任

 労働基準法上、任期の明確な定めはありませんが、実務上は1年(36協定の有効期間と合わせる)取り扱いが一般的です。1年以上の長期間の任期は、従業員の意思を反映しにくくなるため避けてください。
 任期途中で退職・異動などの場合は、再選出を行います。また労働者代表者の行為に重大な不正や不信任がある場合には、解任することは可能です。ただし、会社側が一方的に解任・指名することはできません。


5. よくあるトラブルと留意点

  • 労働者代表者が管理職だった
 →管理監督者は「労働者」に該当しないため、協定が無効となるおそれがあります。
  •  選出手続きの記録が残っていない
 →労働基準監督署の調査で「過半数代表者とは認められない」と指摘されるケースがあります。
  •  同じ人物が数年間連続で選任されている
 →連続して選任されていることは問題ではありませんが、形式的で実態のない選出とみなされるリスクがありますので、繰り返しですが選出手続きの記録を残してください。
 

最後に

 労働者代表者は、会社と従業員の間で法的に重要な役割を果たす存在です。間違った選出方法や、形式的に選出すると、協定が無効となるリスクがあるため、「民主的な手続き」と「記録の保存」が協定の有効性を左右する重要なポイントです。
 毎年の36協定の締結時期などに合わせ、適正な選出を実施することをお勧めします。
 

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