作成日:2026/02/05
【2026年4月施行予定】主要な法改正ガイドについて社会保険労務士が解説
2026年(令和8年)4月1日には、「労働安全衛生法」や「子ども・子育て支援法」、「女性活躍推進法」など、企業の労務管理に直結する重要な法改正が集中しています。 中には「努力義務」にとどまる項目もありますが、これらは将来的な義務化への布石であり、企業の採用ブランディングやコンプライアンス強化にも不可欠な対応です。
本記事では、人事担当者が押さえるべき変更点を分かりやすく解説します。
▼この記事を書いた人 社会保険労務士 寺山 晋太郎(Shintarou Terayama) 一橋大学社会学部卒業。大学卒業後、鉄道会社にて車掌や運転士といった現場仕事から労務管理・社員教育まで幅広い業務を担当。自身のライフステージの変化により、企業活動における「人」にフォーカスする社会保険労務士に魅力を感じ資格取得。現在は、社会保険労務士として「人」を活かし「会社」を発展させていくことを大切に、幅広い業種・職種・企業規模のお客様の支援に従事。
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1. 労働安全衛生法・作業環境測定法の改正
今回の法改正の目玉は、「多様な働き方」への対応と「化学物質管理の自律化」です。
(1) 個人事業者(一人親方・フリーランス)を含めた安全確保
これまで、元方事業者・特定元方事業者が講ずべき安全衛生措置の対象は、主に「自社および関係請負人の労働者」でした。2026年4月からは、同じ場所で作業する個人事業者(一人親方・フリーランス等)も含めた“作業従事者全体”を対象として、安全確保を図ることが求められます。
- 対象:元方事業者・特定元方事業者
- 内容例:危険な場所への立入禁止、墜落防止設備の設置、保護具(ヘルメット等)の着用指示など、個人事業者を含めた作業従事者の安全確保
- 補足:個人事業者自身の義務(危険機械の使用禁止や自主検査など)は、別途2027年4月から段階的に施行される予定です。
(2) 化学物質管理:営業秘密成分の「代替化学名」通知
企業ノウハウの保護と労働者の安全確保を両立させる新たな仕組みです。
- 内容:有害性の低い物質に限り、SDS(安全データシート)で成分名を「代替化学名等」(代替名称)に置き換えて通知することが可能になります。
- 企業の義務:代替化学名等を用いる場合、実際の成分名を記録・保存し、医師から診断・治療のために開示を求められた際には直ちに開示する必要があります。
2. 高年齢労働者の労災防止(努力義務)
「エイジフレンドリーな職場づくり」が企業の努力義務として明文化されます。高齢従業員の増加に伴い、身体機能に配慮した環境整備が求められます。
- 具体的措置の例:
- ハード面: 段差の解消(スロープ設置)、通路の照度アップ、防滑床材の導入
- ソフト面: 身体機能チェックの実施、重量物運搬の補助具(アシストスーツ等)の活用 など
- 今後の対応: 厚生労働省が公表予定の「指針」や、既存の「エイジフレンドリーガイドライン」等を踏まえた対策が求められます。
3. 治療と仕事の両立支援(努力義務)
「労働施策総合推進法」等の改正により、がん等の疾病を抱える従業員への支援が企業の努力義務となります。離職防止(リテンション)の観点からも重要です。具体的な取組内容は、厚生労働大臣が公表する指針で示される予定であり、以下はその方向性を踏まえた代表的な例です。
- 代表的な取組の例:
- 両立支援に関する基本方針(社内規程)の整備
- 時間単位の休暇、時差出勤・在宅勤務など柔軟な勤務制度の検討
- 産業医や地域産業保健センターとの連携体制の構築 など
4. 子ども・子育て支援金制度の創設
少子化対策の財源として、医療保険料に上乗せされる形で「支援金」の徴収が始まります。
- 負担額の目安: 加入者1人あたり月額数百円程度からスタートし、2028年度まで段階的に引き上げ予定。
- 実務上のポイント: 従業員が加入している医療保険(協会けんぽ・健康保険組合等)の保険料率に支援金が含まれる形となるため、その保険料率や給与計算時の控除額の変更に対応するシステム改修や、従業員への周知が必要です。
5. 女性活躍推進法:情報公表義務の拡大
企業の透明性を高めるため、情報公表の義務化対象が中堅企業まで拡大されます。
- 対象企業: 常時雇用労働者数 101人以上(現行は301人以上)
- 必須となる公表項目:
- 男女の賃金の差異
- 女性管理職比率
- 対応: 自社の数値を算出し、厚生労働省のデータベースや自社ホームページ等で公表する必要があります。なお、本法の有効期間は2036年3月31日まで延長されています。
6. 在職老齢年金の支給停止基準額の引き上げ
高齢者の就労意欲を損なわないよう、在職老齢年金の支給停止基準が緩和されます。
- 変更点: 支給停止の基準額が、現行の月額50万円相当から月額62万円相当に引き上げられます。
- 影響:高齢従業員が、賃金と年金をあわせた合計収入を増やしやすくなり、就業継続へのインセンティブが強まります。
7. 特定機械等の検査・検定制度の見直し
ボイラーやクレーン等の「特定機械等」に関する検査・検定制度が見直され、民間機関の活用が広がります。
- 内容: 製造許可の審査や各種検査・検定について、登録機関(民間)が国基準に従って実施する仕組みへ移行します。これにより、検査の効率化や実施体制の強化が図られます。
今後のスケジュールと企業側の主な対応
2026年4月は、特に「安全衛生」および「子育て・女性活躍」分野において実務対応が求められます。
- 常時雇用101〜300人規模の企業: 女性活躍推進法に基づく数値算出と公表準備を、早めに進める必要があります。
- 建設・製造等で元方・特定元方事業者となる企業: 同じ作業場所で働く一人親方・フリーランス等を含めた安全衛生教育・ルールの見直しが重要になります。(なお、個人事業者自身への直接の安全衛生義務付けは2027年4月以降段階的に施行される予定であり、2026年4月時点では『元方・特定元方側の措置義務拡大』が中心となります。)
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