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労務コラム
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作成日:2026/02/27
専門業務型裁量労働制とは?現行の対象20業務や2024年改正、残業代の仕組みを社会保険労務士が徹底解説
「高市首相の見直し表明から考える、現行制度の実像と正しい運用方法」

 裁量労働制の正体は「定額働かせ放題」なのでしょうか。
 現在、裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の二種類があります。
 高市首相の見直し表明を受け、まずは「専門業務型裁量労働制」について、今改めて知っておきたい現行制度の仕組みと実務上の留意点を整理します。
 
 

寺山さん写真


▼この記事を書いた人
社会保険労務士 寺山 晋太郎(Shintarou Terayama)
一橋大学社会学部卒業。大学卒業後、鉄道会社にて車掌や運転士といった現場仕事から労務管理・社員教育まで幅広い業務を担当。自身のライフステージの変化により、企業活動における「人」にフォーカスする社会保険労務士に魅力を感じ資格取得。現在は、社会保険労務士として「人」を活かし「会社」を発展させていくことを大切に、幅広い業種・職種・企業規模のお客様の支援に従事。
 


1. 「子ども・子育て支援金制度」とは?

 専門業務型裁量労働制は、厚生労働省令・告示で定められた20の「専門性が高く、業務の進め方や時間配分を本人の裁量に委ねる必要がある業務」に従事する労働者について、実際の労働時間にかかわらず、労使協定で定めた「みなし労働時間」働いたものとみなす制度です。
 
 みなし労働時間を1日8時間と定めれば、「6時間働いても、10時間働いても、法律上は8時間働いたものとして扱う」ことになります。この「みなす」ルールがあるために、「定額でどれだけでも働かせられる」と誤解されがちですが、実際には以下のような厳格な前提と制約があります。


2. 対象業務は「何でもよい」わけではない

 制度の対象となるのは、次の20業務に限られます。ゆえに一般的な営業、事務、コールセンター、製造ライン作業などは対象外です。

  • 新商品・新技術の研究開発、人文・自然科学の研究
  • 情報処理システムの分析・設計
  • 新聞・出版・放送番組の取材・編集
  • デザイナー(衣服・室内装飾・工業製品・広告等の新デザイン考案)
  • 放送番組・映画等のプロデューサー/ディレクター
  • コピーライター
  • システムコンサルタント
  • インテリアコーディネーター
  • ゲーム用ソフトウェアの創作
  • 証券アナリスト
  • 金融工学等を用いる金融商品の開発
  • 大学における教授研究(主として研究に従事するもの)
  • M&Aアドバイザー(銀行・証券会社における調査・分析+助言)
  • 公認会計士
  • 弁護士
  • 建築士
  • 不動産鑑定士
  • 弁理士
  • 税理士
  • 中小企業診断士

 さらに重要なのは、「形式的にこの20業務に合致している」という理由だけでは足りず、実態として本人が業務の進め方や時間配分について裁量を持っている必要がある点です。たとえば、研究開発の「助手」や、チーフの細かい指示通りに動くプログラマーなどは対象外となります。
 
 また、専門業務とそれ以外の一般事務などを、通常業務として混在させている場合は、全体として専門業務型裁量労働制を適用することはできません(臨時・例外的な兼務のみ、対象業務部分に限ってみなし労働時間制の扱いが可能)。
 
  

3. 制度導入の手続きと、2024年改正以降の「同意」要件

 専門業務型裁量労働制は、企業側の一方的な決定だけでは導入できません。以下の手順が必要です。
  • 事業場ごとに、過半数労働組合または過半数代表者と労使協定を締結
  • 就業規則や個別労働契約への反映
  • 専門業務型裁量労働制に関する協定届(様式第13号)を所轄労基署に届け出
  • 対象となる労働者一人ひとりから「本人の同意」を取得(2024年4月以降の必須要件)
  • 同意取得後、制度の運用開始

 
 労使協定では特に次の事項を定める必要があります。
  • 対象とする業務(上記20業務のどれか)
  • 1日のみなし労働時間
  • 業務遂行の手段・時間配分について、使用者が具体的な指示をしないこと
  • 健康・福祉確保措置の内容
  • 苦情処理措置の内容
  • 労働者本人の同意取得、同意しない場合・撤回時の不利益取扱い禁止
  • 協定の有効期間、記録の作成・保存方法 など

 2024年4月以降は、対象労働者ごと・協定期間ごとに「本人の同意」が必須となり、同意しなかったことや、同意を撤回したことを理由とする不利益取扱いは禁止されています。つまり、「自動的に全員を裁量労働制の適用とする」といった運用は許されません。


4.「労働時間を管理しない制度」ではない

 裁量労働制は、あくまで「時間配分の決定を本人の裁量に委ねる制度」であり、「労働時間を把握しなくてよい制度」ではありません。

  • 実際に働いた時間は、タイムカード・入退室記録・PCログ等、客観的な方法で把握することが原則
  • 1週間平均40時間を超える時間外労働が月80時間を超えた労働者から申し出があれば、医師による面接指導を行う義務
  • 産業医への情報提供など、長時間労働に関する安全衛生上の措置が必要
 
 これらは、専門業務型裁量労働制の適用者にも、そのまま適用されます。放任的な運用(「何時間働いているかも見ていない」)は、制度の趣旨に反し、法令違反となるおそれがあります。


5. 割増賃金は「ゼロ」でよいのか

 「定額働かせ放題」というイメージの背景には、「残業代が一切出ない」という誤解があるように見受けられます。しかし、専門業務型裁量労働制を適用しても、以下の割増賃金は引き続き発生します。

  • みなし労働時間が1日8時間・週40時間を超えている部分:
    • → 時間外労働として25%以上(60時間超は50%以上)の割増賃金が必要
  • 法定休日労働(週1日または4週4日の休日に働いた時間):
    • → 実際に働いた時間に対して35%以上の割増賃金
  •  深夜労働(22時〜翌5時):
    • → 実際に働いた時間に対して25%以上の割増賃金

 つまり、「何時間働いても追加の賃金が不要になる制度」ではなく、「所定の時間内の時間管理の仕方を柔軟にしつつ、長時間労働部分には従来通り割増賃金がかかる制度」です。
 なお、これらの時間外労働・休日労働を行うには、36協定が締結されていることが大前提となります。
 

6. 時間配分の裁量と、欠勤・遅刻との関係

 専門業務型裁量労働制の最大の特徴として、「1日の労働時間数や始業・終業時刻の決定は、原則として本人の裁量に委ねられる」があります。
 
 例えば、所定労働時間が9:00〜18:00(1日8時間)の会社で、裁量労働制の対象者がその日の事情に応じて10:00〜14:00といった働き方をすることがあり得る場合でも、1日8時間のみなし労働時間を定めていれば、「4時間しか働いていないので4時間分カット」とすることはできません。
 
 一方で、「その日にまったく労務提供をしていない」場合は、通常の労働者と同様にノーワーク・ノーペイの原則に基づき欠勤控除が可能です。欠勤控除の計算方法は法令で定めがないため、就業規則で明確にしておく必要があります。


7. 健康・福祉確保措置と長時間労働リスク

 
 専門業務型裁量労働制は、制度上の前提が整っていても、実務では長時間労働になりやすい側面があり、過重労働やメンタル不調のリスクが指摘されています。そのため、労使協定では次のような健康・福祉確保措置を具体的に定めることが求められます。

  • 勤務間インターバル(終業から次の始業まで一定時間空ける)
  • 深夜労働回数の上限設定
  • 一定時間数を超える長時間労働が続いた場合に制度適用を解除するルール
  • 年次有給休暇の連続取得の促進
  • 長時間労働者への医師面接、代償休日・特別休暇付与、健康診断の追加実施
  • 相談窓口の設置、配置転換や産業医の助言・保健指導 など
 
 制度を導入する以上、「裁量だから自己責任」で済ませるのではなく、「裁量を前提にしつつ、健康を守るための枠組みをどう設計するか」が企業側の責任として問われます。


8. 企業・労働者双方にWin-Winとするために

 
専門業務型裁量労働制は、適切に運用されれば、次のようなメリットが期待できます。
  • 業務の進め方を自ら設計することで、創造性や専門性を発揮しやすい
  • 結果・成果に基づいた評価と組み合わせれば、高度専門職人材の処遇に適した枠組みになり得る
  • 企業側としても、人件費の見通しが立てやすく、時間単位ではなく成果基準のマネジメントへ移行しやすい
 
一方で、以下のような点を誤ると、結果として「定額働かせ放題」と揶揄されてしまう状況を招きやすくなります。
  • 対象業務の範囲が曖昧で、実態として一般業務にまで適用を広げてしまう
  • 上司が具体的な指示を細かく行い、名ばかりの「裁量労働」になっている
  • 実労働時間の把握や健康確保措置が実質的に機能していない
  • 割増賃金の扱いが不適切で、長時間労働に見合う処遇が行われていない

 制度自体は「定額働かせ放題」を認めるものではありませんが、実務運用によってはそのような状態に陥り得る、いわば「両刃の剣」であると言えます。
 
 

まとめ

 専門業務型裁量労働制は、決して「定額働かせ放題」の免罪符ではありませんし、そうあってはならない制度です。これまでご説明したような厳格な要件に則る必要があり、運用する側には正確な制度理解が求められますが、正しく運用することができれば、会社にも対象従業員にも大きなメリットをもたらすことができます。
 専門業務型裁量労働制の導入や運用について、ご不明点等ございましたらお気軽にご相談ください。
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