作成日:2026/04/10
【令和8年度】労働保険の年度更新ガイド|申告期間・賃金集計・書き方を徹底解説
社会保険労務士法人クリアパートナーズ 社会保険労務士の寺山です。
本記事では、労働保険の年度更新について解説します。
▼この記事を書いた人 社会保険労務士 寺山 晋太郎(Shintarou Terayama) 一橋大学社会学部卒業。大学卒業後、鉄道会社にて車掌や運転士といった現場仕事から労務管理・社員教育まで幅広い業務を担当。自身のライフステージの変化により、企業活動における「人」にフォーカスする社会保険労務士に魅力を感じ資格取得。現在は、社会保険労務士として「人」を活かし「会社」を発展させていくことを大切に、幅広い業種・職種・企業規模のお客様の支援に従事。
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はじめに:年度更新の「全体像」をつかむ
労働保険(労災保険・雇用保険)の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの「保険年度」を単位として計算します。企業は、年1回、前年度の保険料精算手続きと、新年度の概算保険料の申告を同時に行う必要があり、この手続きを「年度更新」と呼びます。
●申告・納付の「重要期間」と厳守すべきルール
令和8年度の申告・納付期間は、6月1日(月)〜 7月10日(金)です。なお電子申請を含め、5月中に申告・納付を行うことはできません。 準備は早めに進めつつ、受付開始を待って提出しましょう。
申告書は、厚生労働省から緑色(または青色)の封筒で例年5月末〜6月初旬に送付されてきます※ので、放置しないようにしてください。
また、申告・納付期限を過ぎると、保険者である政府が保険料を決定し、さらに追徴金が課される場合があります。そのため、申告・納付手続きは必ず期間内に完了させるようにしましょう。
※今年度より、電子申請が義務付けられている法人(資本金1億円超の会社など)においては、申告書が送付されず、代わりに電子申請に必要な情報が記載された通知書が送付されるようになります。
●手続きのロードマップ
年度更新の手続は以下の流れで行います。
- 【STEP 1:賃金の集計】 1年間に支払った賃金を集計し、労働保険料の算定の基礎となる数値を算出する。
- 【STEP 2:申告書の作成】 算出した数値を申告書に転記し、確定・概算保険料を算出する。
- 【STEP 3:提出・納付】申告書を期限内に提出し、労働保険料の支払いを行う。
【STEP 1】事前の準備:賃金の集計と対象者の確認
まずは「確定保険料・一般拠出金算定基礎賃金集計表」を作成します。
●賃金の定義
労働保険における賃金とは、労働の対償として支払うすべてのものを指します。所得税や社会保険料等を差し引く前の「総支給額」で集計してください。令和7年4月1日から令和8年3月31日までに支払いが確定した賃金が対象です。
賃金の区分(特に間違いやすいポイント)
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区分
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賃金に含めるもの(算定対象)
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賃金に含めないもの(対象外)
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基本給・賞与
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基本給、賞与、役員の労働者分賃金
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役員報酬(役員業務の対価分)
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各種手当
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残業手当、通勤手当(課税・非課税双方)、扶養手当、住宅手当 等
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結婚祝金、死亡弔慰金、退職金 等(就業規則等の定めの有無は問わない)
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在宅勤務手当等
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在宅勤務手当(就業規則等により定額で支給する分)、社会保険適用促進手当※
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在宅勤務手当(実費弁償分)、出張旅費・宿泊費
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休業・その他
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休業手当(労基法26条に基づくもの)、労働者負担分を事業主が負担している場合の社会保険料 等
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休業補償(労基法76条に基づくもの)、健康保険の傷病手当金、解雇予告手当(労基法20条に基づくもの) 等
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※「社会保険適用促進手当」は、社会保険加入に伴う労働者の保険料負担軽減のために支給されるものですが、労働保険料の算定基礎には含める必要があります。
●保険対象者の範囲
労災保険と雇用保険とでは対象者が異なります。なお労働者を雇用保険に加入させるには別途「資格取得届」の提出が必要になりますので、その手続きがきちんとされているかどうかも併せて確認しておきましょう。
対象となる労働者(特に間違いやすいポイント)
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保険種別
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対象となる労働者の条件
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備考
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労災保険
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アルバイト・パート、派遣等、名称を問わず賃金を受ける全労働者
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代表権・業務執行権を有する法人の役員や、事業主と同居の親族は原則対象外
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雇用保険
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@週所定労働時間が20時間以上※
かつ
A31日以上の雇用見込みがある者
※マルチジョブホルダーも集計に含める
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株式会社の取締役や、事業主と同居の親族は原則対象外
昼間学生なども対象外
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【STEP 2】申告書の記入:確定保険料と概算保険料の計算
集計表の数値を申告書へ転記し、以下の手順で計算を進めます。
●算出と記入のステップ
- 確定保険料・一般拠出金の算出:集計表で算出した、前年度の賃金総額に保険料率(令和7年度)を乗じます。この際、1円未満の端数は切り捨てます。
- 過不足の精算:昨年度の年度更新にて納付済みの概算保険料と比較し、不足額または充当額を計算します。
- 概算保険料の算出:原則として新年度の見込賃金総額に基づき、令和8年度の保険料率を用いて計算します。こちらも、1円未満の端数は切り捨てます。なお、計算された概算保険料の額が40万円以上の場合(労災保険又は雇用保険のどちらか一方のみ成立している場合は20万円以上の場合)は、延納(分割納付)することが可能です。
●還付請求を行う場合
前年度納付済みの概算保険料額が大きく、充当し切れなかった場合や、事業を廃止するので新年度の概算保険料が発生しない場合などでは、還付金が発生することがあります。その場合は別途「労働保険料・一般拠出金還付請求書」の作成と提出が必要となります。
●第3種特別加入者(海外派遣者)がいる場合
海外派遣者で労災保険に特別加入している労働者がいる事業所は、それらの分については別途計算し、専用の書式で添付書類を作成したうえで提出が必要になります。なお、特別加入者についての加入・脱退・変更等については別途手続きが必要になりますので、それらの手続がなされているかも併せて確認しておきましょう。
【STEP 3】提出と納付
申告書の提出は窓口持参・郵送いずれも可能です。また電子申請により行うこともできます。
納付については、納付書を利用して行う場合は、金融機関に納付書を持参することによって行います。また電子申請により申告書を提出した場合は、電子納付(インターネットバンキング)することもできます。
なお納付を口座振替にて行う場合、保険料の引き落とし期日が通常よりも最大2カ月ほど延長されます。口座振替にする場合は事前の申請が必要となります。
令和8年度 納期限スケジュール
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期別
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窓口・郵送・電子納付の期限
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口座振替の振替日
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全期or第1期
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7月10日
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9月7日
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第2期
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11月2日
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11月16日
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第3期
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2月1日
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2月15日
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なお窓口提出・納付は期限日が非常に混雑するため、余裕を持った手続きを心がけましょう。
おわりに
年度更新については、以下も併せてご参考いただければと思います。
- 年度更新コールセンター:0120-963-339(開設期間5/28〜7/17)
- 厚生労働省ホームページ:最新の集計表様式や記入例がダウンロード可能です。
本記事に関する詳細や実務対応に関するご相談は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。