作成日:2026/03/13
働き方改革5年の総点検|厚労省が最新調査を公表。労働者の6割が現状に満足も「もっと稼ぎたい」層も浮き彫りに【社会保険労務士が解説】
社会保険労務士法人クリアパートナーズ 社会保険労務士の寺山です。
働き方改革関連法の施行から5年が経過し、厚生労働省は「働き方改革関連法施行後5年の総点検」として労働者の意識・意向調査を実施しており、先日(3/5)結果が公表されました。
有効回収数3,000人のアンケート結果や企業のヒアリングからは、現状に満足する層が多い一方で、さらなる時短を願う層や、逆に「もっと働きたい」と切望する層もあることが判明しています。
▼この記事を書いた人 社会保険労務士 寺山 晋太郎(Shintarou Terayama) 一橋大学社会学部卒業。大学卒業後、鉄道会社にて車掌や運転士といった現場仕事から労務管理・社員教育まで幅広い業務を担当。自身のライフステージの変化により、企業活動における「人」にフォーカスする社会保険労務士に魅力を感じ資格取得。現在は、社会保険労務士として「人」を活かし「会社」を発展させていくことを大切に、幅広い業種・職種・企業規模のお客様の支援に従事。
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1. 労働時間の現状:約6割が「このままで良い」
調査によると、現在の労働時間について「ちょうどよい」と感じている労働者は全体の59.7%にのぼります。また、今後の希望についても59.5%が「このままでよい」と回答しており、制度の定着が一定程度進んでいることが見て取れます。
一方で、労働時間を「減らしたい(やや減らしたいを含む)」とする回答は全体の30.0%、「増やしたい(やや増やしたいを含む)」とする回答は10.5%でした。
2. 「労働時間を減らしたい」3割の労働者が抱える事情
労働時間を減らしたいと考える層(30.0%)について詳しく見ると、長時間労働の是正だけでなく、私生活の充実を求める切実な声が上がっています。
- ワークライフバランスの重視
- 労働者へのアンケート調査では、減らしたい理由として「プライベートの時間の確保」や「ワークライフバランスを重視したい」といった意見が目立ちます。
- 実労働時間との相関
- 週の平均実労働時間が長くなるほど「減らしたい」という意向は強まり、週60時間超70時間以下の層では約61.4%(「減らしたい」35.1%、「やや減らしたい」26.3%の合計)に達します。
- 「常に減らしたい」という切実さ
- 減らしたいと回答した人のうち、約64.1%が「特定の時期に限らず、常に減らしたい」と考えており、日常的な業務負担の軽減を望んでいることがわかります。
- 企業側の視点
- 企業側も、労働時間を減らしたい理由として「人材の確保・定着(22社)」や「労働者の健康確保・ワークライフバランス(18社)」を挙げており、働きやすさが採用力や人材定着に直結するという認識が広がっています。
3. 「もっと働きたい」労働者の切実な経済的理由
一方で、労働時間を増やしたいと考える層(10.5%)の動機は、時短希望者とは対照的に、経済的な要因が際立っています。
- たくさん稼ぎたいから:41.6%
- 残業代がないと家計が厳しいから:15.6%
- 自分のペースで仕事をしたいから:19.7%
特に年収200万円未満の層や、歩合制のトラックドライバーなどから「収入を維持・増加させるために労働時間を確保したい」という切実な声が寄せられています。
4. 現場の課題:人手不足と上限規制の板挟み
企業(327社)へのヒアリングでは、約6割の企業が「現状のままがいい」とする一方で、現場では深刻な課題も噴出しています。
- 建設業の課題:民間工事における「短工期発注」が長時間労働を誘発しており、発注者への適切な工期設定の要請を求める声があがっています。
- 制度の複雑さ:複雑な労働ルールの厳格化により、かえって「隠れ残業」が増えてしまうことを懸念する声も上がっています。
まとめ:誰もが長く健康に働ける職場へ
労働者が「妥当」と考える月間の時間外労働時間(残業時間)は、「20時間以下」が累計で約65.6%、「45時間以下」まで含めると約93.0%に達します。
今回の調査結果は、働き方改革が労働者に定着してきていることを示すとともに、個々の労働者が抱える「休みたい」と「稼ぎたい」というニーズのズレを埋める難しさを示しています。今後は、一律の規制だけでなく、収入の確保や発注慣行の改善を含めた多角的なアプローチが求められそうです。