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労務コラム
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作成日:2026/04/02
【2026年4月施行】「治療と仕事の両立支援」が努力義務に!企業の対応ポイントと実務フローを解説
 社会保険労務士法人クリアパートナーズ 社会保険労務士の寺山です。
 労働施策総合推進法が改正され、2026年4月より、「治療と就業の両立支援」に関する必要な措置を講じることが企業の努力義務となります。(2026年4月法改正については、こちらの記事もご参照ください)
 我が国は深刻な少子高齢化と労働力人口の減少に直面しており、企業にとって「人材の確保と定着」は喫緊の課題となっています。一方で、医療技術の進歩により、かつては治療のために会社を辞めざるをえなかった疾病も、今では適切な治療を続けながら就業を継続することも可能となっています。
 そこで今回の記事では、「治療と就業の両立支援」について、厚生労働省発行の「治療と就業の両立支援指針」に基づき、実務の視点から解説していきます。
 

寺山さん写真


▼この記事を書いた人
社会保険労務士 寺山 晋太郎(Shintarou Terayama)
一橋大学社会学部卒業。大学卒業後、鉄道会社にて車掌や運転士といった現場仕事から労務管理・社員教育まで幅広い業務を担当。自身のライフステージの変化により、企業活動における「人」にフォーカスする社会保険労務士に魅力を感じ資格取得。現在は、社会保険労務士として「人」を活かし「会社」を発展させていくことを大切に、幅広い業種・職種・企業規模のお客様の支援に従事。
 


1. 「治療と就業の両立支援」の意義

 企業が治療と仕事の両立を支援することには、以下3つの意義があると考えられます。
  • 人材の流出防止
 人材の継続的な確保・定着をもたらし、採用・育成コストの抑制につながります。特に、スキルと経験を持つ労働者が病気を理由に離職してしまうことは、企業にとって大きな損失となり得ます。
  • 組織の力の向上
 病気になってしまっても、離職することなく治療を続けることができ、かつ能力を発揮できる就業環境を整備することは、社員に安心感やモチベーション向上をもたらし、結果として会社組織の強化につながります。
  • 企業価値の向上
 人的資本を重視し、多様な人材を包摂する姿勢は、企業の社会的責任の達成に貢献するとともに、ESG投資の観点からも高く評価され得ます。
 

2. 両立支援を支える環境整備と制度設計

 まずは労働者が安心して申出を行えるよう、企業として以下の環境や制度を整備します。

@ 事業主による基本方針の表明と周知
 企業として「治療と仕事を両立できる職場を目指す」と宣言し、基本方針やルールを全従業員に周知します。

A 研修等による啓発
 両立支援を円滑に実施するため、管理者含め全従業員に対して、研修などを実施します。

B 柔軟な休暇・勤務制度の導入
 両立支援においては、治療のための時間の確保や就業時間の制限、通勤負担の軽減などが必要なことが想定されます。そのため、例えば以下のような制度を整備することで、治療への配慮を行います。
  • 時間単位の年次有給休暇:労使協定の締結により可能です。数時間単位での検査や通院に対応できます。
  • 法定外の休暇:傷病休暇や通院休暇など、年次有給休暇とは別の休暇を定めます。なお、賃金支払の有無や取得条件は企業が独自に定めることができます。
  • 時差出勤・在宅勤務・短時間勤務:通勤に伴う身体的負担の軽減や、治療に伴う就労時間の制限に対応します。
C 対応フロー・相談窓口の明確化
 「治療と就業の両立支援」は従業員からの申出を原則とすることから、従業員が安心して申出を行えるように、相談窓口や対応フローを明確に示します。


3. 両立支援のプロセス

 「治療と就業の両立支援」は、以下の流れで進めることが望ましいとされています。

Step 1:労働者による申出と情報収集
 従業員から企業へ、支援を必要とする旨の申出を受けることが第一のステップになります。なおこの際、支援に必要な情報を主治医を通して提供してもらうことが必要となるため、予め一定の書式を企業側で用意しておき、それを従業員経由で主治医に記載してもらうなどのフローが想定されます。

Step 2:産業医等からの意見聴取
 産業医がいる場合は、主治医の医学的意見を産業医に提供し、就業継続の可否や就業上の注意・治療に対する配慮(就業継続OKの場合)等についての意見を産業医から聴取します。

Step 3:就業継続の可否を判断
 主治医や産業医の意見を勘案し、就業継続の可否を判断します。なおこの際、安易に就労不可と判断するのではなく、例えば配置転換や就労時間短縮など可能な限り就労が継続できるような措置を検討し、就労の機会を確保することが重要です。

Step 4-1:両立支援プランの作成・実施・周囲を含めたフォローアップ(就労継続可能な場合)
 就労可能と判断した場合、就労によって病状が増悪することがないように、就労上の措置や治療に関する配慮を定めます。この際、治療の状況や今後の予定、就労上の措置やフォローアップの方法などをまとめた「両立支援プラン」を作成し、当該プランに従って進めていくことが望ましいとされます。
 なお、当該従業員に対して就業上の措置や治療に対する配慮を行うことにより、周囲の従業員への負荷が一時的に高まることも考えられますので、必要な範囲での周囲への情報提供や支援などのフォローアップを併せて行うことも重要です。

Step 4-2:休業開始前・休業中のフォローアップならびに職場復帰への支援
 就労が難しいと判断した場合は休業させることになりますが、その際も休業に向けた支援(休業制度やその間の賃金などの情報提供)や休業期間中のフォローアップを行いつつ、病状が回復した際には改めて就労の可否を判断します。


4. 健康情報の取り扱いについて

 健康情報は極めて機微な個人情報(要配慮個人情報)となりますので、取り扱いには厳重な注意が必要です。
 原則として、健康情報を事業主が労働者本人の同意なく取得してはなりません。また、労働者本人からの申出により事業主が把握した健康情報については、当該情報を取り扱う者の範囲や第三者への漏えいの防止措置など、適切な情報管理体制を整備しておくことが重要となります。
 一方で、申出者への配慮や就業上の措置を行うに当たっては、その同僚や上司等から理解を得ておくことも必要となることから、就業上の措置のために必要な範囲という大前提のもと、申出者ともよく話し合いの上、共有する情報の範囲を検討するようにします。


5. 外部支援機関の活用

 なお「治療と就業の両立支援」については、以下の専門機関と連携して進めることもできます。
  • 産業保健総合支援センター:都道府県ごとに設置されており、両立支援に関する相談や制度導入の支援、両立支援プラン作成の支援などを受けることができます。
  • 障害者就業・生活支援センター:全国各地に設置されており、病気による後遺症などがある労働者について、特性を踏まえた雇用管理について助言を受けることができます。
  • 難病相談支援センター:主に都道府県ごとに設置されており、患者(労働者)と事業所間の調整支援を受けることができます。
 
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