作成日:2026/04/24
【社労士が解説】10人未満のスタートアップに就業規則は必要?作成すべき5つの理由とメリット
社会保険労務士法人クリアパートナーズ 社会保険労務士の寺山です。
労働基準法上、常時勤務する従業員が10人未満の会社については就業規則の作成・届出の義務がありません。そのため、数人規模のスタートアップ企業では「うちはまだ義務がないから後回しでいい」となりがちです。
ただ、必ずしも「義務がない」=「必要がない」ということではありません。
むしろ「鉄は熱いうちに打て」の格言通り、会社の制度が固まりきっていないスタートアップの時期において早期にルールを明文化しておくことには、多くのメリットがあります。
本記事では、スタートアップが早期に就業規則を整備すべき理由を、実務的な視点から解説します。
▼この記事を書いた人 社会保険労務士 寺山 晋太郎(Shintarou Terayama) 一橋大学社会学部卒業。大学卒業後、鉄道会社にて車掌や運転士といった現場仕事から労務管理・社員教育まで幅広い業務を担当。自身のライフステージの変化により、企業活動における「人」にフォーカスする社会保険労務士に魅力を感じ資格取得。現在は、社会保険労務士として「人」を活かし「会社」を発展させていくことを大切に、幅広い業種・職種・企業規模のお客様の支援に従事。
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1.社内ルールへの認識のズレを防ぐ
スタートアップはスピード重視のため、口約束やチャットツール(Slack、Chatworkなど)での合意で物事が進みがちです。しかし、組織が拡大するにつれ、些細な認識のズレが大きな火種となります。
例えば・・・
- リモートワーク時の細かな運用:中抜けの扱いや、始業・終業および休憩等の報告のルールなど
- 残業代の計算:計算の基礎となる月平均所定労働時間や日数など
- 勤怠の取扱い:遅刻・早退・欠勤時の控除計算方法など
- 休暇の扱い:年次有給休暇の取得基準、慶弔休暇等の法定外休暇など
これらについて場当たり的に対応していると、「この人にはこう言った」「他の人にはこう対応したのに今回は違う」といった不公平感を生み、組織のエンゲージメントを低下させてしまいます。
これらに関するルールを就業規則として明文化・周知しておくことによって、社内ルールの運用コストとトラブル発生の可能性を大きく下げることができます。
2.「会社を守る」盾になる
たとえ常時10人未満の会社であっても、適切に作成・周知された就業規則は、労働契約の内容として法的な効力をもちますので、万が一の紛争時、会社を守る強力な「盾」となります。
例えば・・・
- 解雇の正当性:解雇事由が就業規則に明記されていない中で解雇を行った場合、会社が恣意的に行ったとみなされ、会社側の主張が極めて弱くなってしまいます。
- 懲戒処分の正当性:基本的に、懲戒処分は就業規則に定めがなければ行うことができません。
- 業務命令権:残業や休日出勤、配置転換などの業務命令が、会社の正当な権利の範囲にあるかどうかを判断する根拠となります。
「何かあってから」では後手に回ってしまうのが労務管理です。
3. 会社の「カルチャー」を言語化し、採用力を強化する
「就業規則」という言葉からは「禁止事項」「罰則」といった堅苦しいイメージが想定されがちですが、就業規則の役割はそれだけではありません。会社の理念や方針・ビジョンといったものを、労働条件・働き方という形で言語化した「宣言書」のような役割もあります。
例えば・・・
- 柔軟な働き方:フレックスタイム制、裁量労働制、副業についてなど
- 両立支援:育児・介護へのサポート体制についてなど
- コンプライアンス:ハラスメント等に対する断固たる姿勢など
上記に関することが正式な規程として整っていることは、会社のカルチャーを内外に明確に示すものとなります。
また採用面でも、応募者に対して「組織として成熟している」「安心して長く働ける」というポジティブなメッセージになり、優秀な人材の獲得・定着に直結します。
4. 駆け込み対応の負担を軽減する
常時勤務する従業員が10人以上となったタイミングで、法律上の就業規則の作成・届出義務が発生します。
具体的には、絶対的必要記載事項といわれる、必ず記載しなければならない事項をすべて満たしたうえで、必要に応じて他の記載も整え、従業員代表の意見書とともに所轄の労働基準監督署に届け出なければなりません。
これを1から行うのは大きな負担となりますし、社内調整の手間も大きくなってしまいます。
対して、10人未満の段階で就業規則、もしくは就業規則に準ずるものを整備しておけば、いざ作成・届出義務が発生した際、必要な微修正を施すのみで届け出をすることができます。
5.インシデント発生時に迅速な対応ができる
情報の持ち出し、ハラスメント事案、無断欠勤など、少人数の組織であってもこういった労務管理上のトラブルが起こる可能性はゼロではありません。
トラブルが起きた際、ルール(服務規律)がなければ、その都度「どう対処するか」を検討しなければならず、対応が後手に回ります。また、人によって処分が異なれば、さらなる不信感を招きかねません。
「事象が発生した際に、どの条文を適用するか」が明確であれば、会社は迷わず迅速に、かつ公平に事態を収束させることができます。
なお項目2でも記載しました通り、原則として懲戒処分は就業規則等に規定がない場合は行うことができません。規定がない中で処分を行った場合、会社が恣意的に行ったものとして正当性を否定される可能性が極めて高くなります。
まとめ
スタートアップにとっての就業規則は、動きを縛る鎖ではなく、安全にアクセルを全開にするための、いわば「シートベルト」です。
当事務所では、スタッフ全員が一般企業での勤務経験を持っており、現場の温度感を理解した上でのルール作りをサポートしています。
- まずは必要最低限なものから作りたい
- クラウド勤怠(DX化)に合わせた規程を作りたい
- 今のうちにガッチリとルールを固めておきたい
- 社長の思いを従業員に伝えたい
など、貴社のフェーズやニーズに合わせた柔軟なご提案が可能です。
まずは小さな疑問から、お気軽にご相談ください。
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