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労務コラム
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作成日:2026/07/17
【2028年4月義務化】50人未満の事業場向け ストレスチェック導入について【社労士が解説】

 社会保険労務士法人クリアパートナーズ 社会保険労務士の寺山です。
 労働安全衛生法改正により、2028(令和10)年4月1日より従業員50人未満の小規模事業場におけるストレスチェック実施が「義務」となります(現在は努力義務)。ストレスチェックは1年以内に1回の実施が必要ですので、少なくとも2028年度内に実施しなければならないことになります。
 ストレスチェックの意義は「従業員のメンタルヘルス不調の未然防止」です。ストレスチェックを行うことにより、従業員に自らのストレス状態を自覚してもらいセルフケアを促すとともに、高ストレス従業員への医師面談、医師の意見を踏まえた就業上の措置の実施、集団分析を通じた就労環境の改善といった総合的な対策を打ち出していくことが可能となります。
 メンタルヘルス不調は長期化しやすい傾向があります。休業期間は平均約3か月に及び、復職後の再休業率も約50%に達するというデータがあり、特に小規模な企業にとってメンタルヘルス不調による従業員の長期離脱はかなりの痛手となり得ることから、不調に陥る前に食い止める「一次予防(未然防止)」の仕組みの構築が大変重要になります。
 本記事では、特に50人未満の事業場においてストレスチェックを実施するにあたっての流れや注意点を説明いたします。
(注:なお、小規模事業場のストレスチェック実施にあたっては、プライバシー保護の観点から外部機関の活用が推奨されておりますので、本記事でも外部機関への委託を前提として作成しております)
 

寺山さん写真


▼この記事を書いた人
社会保険労務士 寺山 晋太郎(Shintarou Terayama)
一橋大学社会学部卒業。大学卒業後、鉄道会社にて車掌や運転士といった現場仕事から労務管理・社員教育まで幅広い業務を担当。自身のライフステージの変化により、企業活動における「人」にフォーカスする社会保険労務士に魅力を感じ資格取得。現在は、社会保険労務士として「人」を活かし「会社」を発展させていくことを大切に、幅広い業種・職種・企業規模のお客様の支援に従事。
 


1.事業者による導入方針の決定と表明

 ストレスチェック制度を導入しても、それが有効活用されなければ意味がありません。まずは従業員に安心して受けてもらえるよう、会社の基本方針を策定し周知を図ることが大切です。
 周知内容としては以下が考えられます。
  • 制度の目的
    • メンタルヘルス不調の発見が目的ではなく、従業員自身がストレスに気付く(セルフケア)機会を提供しつつ、会社も職場環境の課題を把握し改善につなげることで、メンタル不調の未然防止が目的である、ということをはっきりと表明します。
  • 徹底したプライバシー保護
    • 個人の測定結果は本人へ直接通知され、本人の同意なく会社が結果を知ることはないので、プライバシーは遵守される旨を表明します。
  • 不利益取扱の禁止
    • ストレスチェック受検の有無や結果、医師の面接指導の申し出を理由とした評価の低下などの不利益取扱いは一切ない旨を表明します。
 

2.関係労働者の意見聴取と社内ルールの策定

 完全なトップダウンでは、実効性ある制度の構築は困難です。実施体制や方法等について関係労働者の意見を聴取し、その結果を踏まえたルールと体制を作っていきましょう。ただ、従業員50人未満の小規模事業場では衛生委員会の実施義務がないので、その他の既存のコミュニケーション機会(定例の業務ミーティングや朝礼など)を最大限活用していくこととなります。
 関係者の意見聴取を踏まえ、制度についての社内ルールを策定することとなりますが、最低限以下の事項について定めることが必要です。
  • 実施体制: 外部機関への委託範囲と社内の窓口など
  • 実施方法: 実施時期、実施形態(紙orWEB)、医師との面談方法など
  • 記録保存: ストレスチェック結果・医師との面談記録の保存先など
  • 情報管理: 結果・記録の管理と目的など
  • 開示・苦情処理: 制度についての相談窓口など
  • 不利益取扱の禁止: ストレスチェック未受検や結果、面接指導を受けたことによる不利益取扱い(配置・昇進・評価など)の禁止
 

3.ストレスチェック制度の実施体制構築と外部機関選定

 ストレスチェックを外部機関に委託する際の実施体制イメージは下図の通りです。

 (厚生労働省発行『小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル』より抜粋)
 
 外部委託する場合でも、実施責任はあくまで事業者にあります。事業者は実務担当者(10人以上の事業場では衛生推進者、10人未満の事業場では事業者自身など)を置き、外部機関との窓口や実施計画の策定、実施管理を行います。
 それに対して外部委託先では実施者・実施事務従事者を置き、ストレスチェックの実施と結果の判定・保存などを行います。

 外部委託先の選定については、料金ももちろん大事ですが、サービス内容がどこまで含まれているのか(例えば医師の面接指導や結果の集団分析も含まれるのか)、個人情報保護の体制は充実しているか(プライバシーマーク等の認証の有無など)などの観点から総合的に検討することが必要です。
 なお医師の面接指導については、労働者数が50人未満の事業場では最寄りの「地域産業保健センター」(地産保)に依頼して無料で受けることも可能です。(地産保ではストレスチェック自体は実施しておらず、あくまで面接指導のみとなります)
 
  

4.ストレスチェックの実施、結果通知、保存

@実施
 チェックの調査票については、委託先が配布・回収を行いますが、実施時期やストレスチェック受検対象者の選定、実施予告などは実務担当者が行う必要があります。
 法定のストレスチェック受検対象者は下記をいずれも満たす従業員です(定期健康診断の実施義務がある従業員と同じ)。 もちろん、この範囲を超えて行うことは問題ありません。
  • 期間の定めのない労働契約により使用される者、もしくは1年以上の有期雇用契約(契約更新も含む)にて使用される・使用される予定の者
  • 1週間の所定労働時間数が当該事業場の通常の労働者の4分の3以上であること
 なお、定期健康診断とは違い、ストレスチェックは従業員に受検の義務はありませんが、制度を効果的なものにするためにもなるべく受けてもらうように案内しましょう。

A結果通知
 結果通知も、委託先から直接従業員本人へ行います。本人の同意がなければ、結果を事業者が知ることはできません。
 また、医師の面接指導の対象となる従業員に対してはその旨も併せて通知することが必要です。その際、従業員が面接指導の申出を行ったことや面接指導の結果は事業者に伝わりますので、その旨も付記しましょう。ただ、医師の面接指導の申出があった場合であっても、事業者が本人同意なくストレスチェック結果の提供を受けることはできません。

B結果の保存
 従業員のストレスチェック結果については、委託先において保存するのが基本となります。というのも、事業者は従業員の同意がなければ結果の提供を受けることができないためです。
 
 

5.医師による面接指導と事後措置の実務

 ストレスチェックの結果、医師の面接指導の対象となった者から申出があった場合は、面接指導を受けさせなければなりません。申出先(事業者or委託先)について制限はありませんが、対象者が安心して申出ができるような体制の整備が必要です。
 事業者は、面接指導の実施に当たって必要な情報を医師に提供します。例えば
  • 対象労働者の氏名・性別・年齢・所属部署・役職など
  • ストレスチェック実施前直前の労働時間、業務内容
  • 定期健康診断の結果
  • 個人のストレスチェック結果(従業員本人より提供させる)
等が考えられます。面接指導については情報通信機器を用いて行うことも可能ですが、医師が必要を認めた場合は対面となります。
 
 面接指導の結果は必要な範囲で事業者に提供されますので、それを基に就業上の措置の必要性などについて医師から意見聴取を行います。意見聴取は面接指導後1か月以内に行う必要があります。
 意見聴取の結果を踏まえ、必要があると認められる場合は、当該従業員の実情を考慮しつつ、対応可能な就業上の措置を講じます。例えば労働時間の短縮(時間外・深夜労働の制限含む)、作業の転換、就業場所の変更などが考えられますが、一方的に行うことはせず、対象従業員の意見も十分に聴取し、可能な限り納得を得たうえで行います。また本人だけではなく当該部署の管理者や同僚に対しても、プライバシーに配慮しつつ必要な説明を行い、理解を得ることが大事です。
 なお、面接指導の結果は事業者において5年間保存しなければなりません。

 

6.集団分析・職場環境改善による組織の活性化

 ストレスチェックの結果を集団ごとに集計・分析する集団分析は法的には努力義務であり、必ず実施しなければならないものではありません。ただ、職場環境の改善につなげるためには必要不可欠な情報のため、実施が推奨されます。集団分析結果を活用し、職場環境のストレス要因の軽減に取り組んでいくこととなります。
 なお集団分析は、個人特定を避けるため「10人以上の集団」で行うことが必要であり、集団・分析単位が10人を下回る場合には、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけないことになっています。
 
 

7.留意点・まとめ

 まず情報の取扱いには十分注意する必要があります。個人のストレスチェック結果は個人情報保護法上の「要配慮個人情報」にあたるため、その入手や取り扱いについては極めて慎重に行う必要があり、基本的に事業者は入手すべきではない、とされております。
 それに対し、医師による面接指導の申出の有無や結果等については従業員の同意なく取得が可能ですが、トラブル防止のためにも、面接指導の申出があった際にあらかじめ伝えておくのが良いでしょう。その際「結果が伝わるのならば面接指導は受けたくない」という従業員がいた場合に備え、面接指導以外に利用できる相談手段についても併せて情報提供しておくのも重要です。このような相談手段については、厚生労働省が運営する「こころの耳」(こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト)などがあります。
 
 次に、ストレスチェック結果や面接指導結果、またはストレスチェックを受検しないこと、医師による面接指導を申出たことなどを理由とした不利益取扱いを行ってはなりません。就労上の措置はあくまで従業員の健康確保に必要な範囲でのみ行う必要があり、それ以外の不当な目的や動機で行われたと判断された場合は不利益取扱いとなります。またストレスチェックの実施義務があるのは事業者であり、従業員にはストレスチェック受検の義務はありませんので、強制はできないことに留意しましょう。
 
 最後に労基署へのストレスチェック結果報告ですが、義務となるのは従業員数が50人以上の事業場となりますので、50人未満の場合は不要となります。ただ、この人数はストレスチェック受検者数ではなく、あくまで当該事業場で常時使用されている従業員の数となります(労働時間数が短いアルバイトやパート、派遣労働者もカウントに含めます)。よって、ストレスチェック受検者数が50人未満でも、常時使用されている従業員数のカウントが50人を超える場合は報告義務がありますので注意してください。
 
 2028年4月から50人未満の事業場でもストレスチェックが義務化されます。従業員のメンタル不調を未然に防ぐため、プライバシー保護や不利益取扱いの禁止を徹底し、外部機関も活用しながら早めの体制構築を進めましょう。厚生労働省のホームページ(労働者数50人未満の小規模事業者の方|厚生労働省)も併せてご参照ください。
 ストレスチェックについてご不明点等ございましたら、お気軽に問い合わせください。
 
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