作成日:2026/08/07
「男は仕事、女は家庭」は過去の話!若年層の本音と人材流出を防ぐ両立支援【社労士が解説】
社会保険労務士法人クリアパートナーズ 社会保険労務士の寺山です。
2026年7月、厚生労働省は「若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査」の結果を公表しました。全国の17歳から39歳(高校生〜社会人)、15,845人を対象としたこの大規模調査は、若年層の意識において、かつての「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業はもはや「過去の話」となり、パートナー同士が同じくらい主体的に子を育てる「共育て(トモイク)」へ移行していることを示しています。
本記事では、本調査の概要を説明すると共に、子育て世代を人的資本として活用していくために企業が留意すべき点を示したいと思います。
(以下、本記事で利用している画像は全て『厚生労働省・共育プロジェクト 若年層における仕事と育児の両立に関する意識調査(速報)』資料からの引用です)
▼この記事を書いた人 社会保険労務士 寺山 晋太郎(Shintarou Terayama) 一橋大学社会学部卒業。大学卒業後、鉄道会社にて車掌や運転士といった現場仕事から労務管理・社員教育まで幅広い業務を担当。自身のライフステージの変化により、企業活動における「人」にフォーカスする社会保険労務士に魅力を感じ資格取得。現在は、社会保険労務士として「人」を活かし「会社」を発展させていくことを大切に、幅広い業種・職種・企業規模のお客様の支援に従事。
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1.ジェンダー意識の変化
かつての日本社会で支配的だった「男は仕事、女は家庭」という固定観念は、若年層の意識の中にはほとんど存在しないことが明らかになっています。
図1が示す通り、家事や育児の具体的なタスクにおいて、「男女は関係ない」と回答した割合はいずれのタスクにおいても約8割となっています。性別で見ると若干女性の方が高いですが、男性でも8割近くが「男女は関係ない」と回答しているのは注目すべき結果です。
図1
2.理想と現実
家事育児の分担において若年層が目指しているのは、男性が「手伝う」レベルではなく、対等なパートナーシップです。図2によると、希望する家事・育児の分担割合として最も多いのは「5:5」であり、4割近くを占めています。
一方で、実際にそれを実現できている層は「2割」に留まり、全体として家事育児の負担が女性に偏りがちであることが示されています。
図2
この要因としては、男性の方が労働時間が長い傾向があるため、そのしわ寄せとして家事育児分担が女性に偏重しがちである、ということがあると思われます。この理想と現実のギャップを埋めるひとつの解決策が、男性の育児休業の取得になります。
3.男性の育休も「当たり前」になりつつある
つい先日公表された令和7年度における育児休業の取得割合は、男性において50.9%(前年比+10.4%)となっており、二人に一人の男性が育児休業を取得しています。また、図3によれば、子どもを希望する若年層の約9割(87.2%)が育休取得を希望しており、中でも男性の5割超、女性の約8割が「1か月以上」を求めています。
現状、男性の育児休業取得における期間のボリュームゾーンは1カ月以上〜3カ月未満ですが、意識の上でもこれが裏付けられた形です。二人に一人という割合が示すのは、もはや男性の育休は特別なものでもなんでもなく、当たり前のものになりつつあるということではないでしょうか。
4.職場の「両立しやすさ」が、社員の定着率を劇的に変える
企業にとって、仕事と育児との両立支援はもはや福利厚生ではなく、極めて重要な「人材流出防止策(リテンション戦略)」になりつつあります。
それを裏付けるのが図4です。自分の職場が「子育てとの両立がしやすい」と感じている人の78%がこのまま働き続けたいと回答しているのに対し、「子育てとの両立がしにくい」と感じている場合は33.1%にとどまっており、両立のしやすさが組織への帰属意識に大きな影響を与えていることが分かります。
同様の傾向は「配偶者の職場」にもあてはまり、配偶者の職場が子育てとの両立がしやすい場合も、(自分が)このままの職場で働き続けたいと考える傾向があることが明らかになっています。
5.子育てとキャリアアップの両立
図5が示す通り、育児と仕事の両立に積極的に取り組みたいという思いが強い層は、キャリアアップに対する思いも強い傾向があります。これは当然と言えば当然で、仕事も育児も頑張りたいからこそ両立への思いが強くなるということでしょう。「仕事か、家庭か」という二者択一は、若年層の意識の中では薄れつつあります。
図5
つまり、例えば「育児中だから、責任ある負担の重い仕事は無理だろう」という配慮が、逆に従業員の意欲を削ぎ、人材定着にマイナスに働いていた可能性もあるということです。
6.両立に向けて
本調査結果を受けて、子育て世代に長く活躍してもらうためには具体的にどのような手立てが必要でしょうか。そのヒントも本調査結果内にあります。
図6によれば、両立ができていると実際に感じている要因として重要なファクターが「業務量」です。「業務量が適切」「業務量が調整できる」「慢性的な長時間労働がない」など、業務量にかかわる事項が上位を占めています。また「職場に相談できる」「上司や管理職、同僚の理解がある」という、いわゆる職場の「心理的安全性」が保たれていることも要素の一つとなっています。
図6
これらのことより、子育て世代に長く活躍してもらうための方策として「業務量の平準化」と「職場の心理的安全性の確保」が挙げられると思います。一方で、両立を強く望む層は、キャリアアップ志向が高いという点も考慮すると、「業務量の平準化」は個々のキャリア経験を損なわない形で行うのが望ましいといえます。
参考までに、心理的安全性の構築のために弊所では「互いの話を最後まで聞く」ことを心掛けるようにしています。例えば、部下の報告を上司が遮って話し始めるのはありがちなことですが、それは部下にとっては「自分の話を聞いてくれない」という認識につながり、安心して報告できなくなってしまいますので、そうならないように心理的安全性を確保して、人材定着を図れるように事務所全体で心掛けています。
まとめ

若年層では「共育て」意識が定着し、男性の育児休業取得や男女間の対等な家事育児分担が当然視されています。企業の人的資本活用の観点からも、業務量の平準化や心理的安全性の確保などをはじめとした「仕事と育児の両立支援」が人材流出防止と活力向上に不可欠です。
両立支援に向けた環境整備や制度設計等でお困りのことがございましたら、弊所までご相談ください。
