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労務コラム
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作成日:2026/10/09
【社労士が解説】「固定残業代」制度における3つの運用ポイントと就業規則等への記載例

「毎月、固定残業代を払っているから、残業時間の集計や追加の支払いは不要」
「定額残業代(固定残業代)を導入しているから、残業はさせ放題だ」

 上記認識はいずれも「法的には誤り」となります。

 固定残業代制度は、正しく運用すれば給料計算の手間を減らし、給与計算実務の簡素化が図れ、従業員の収入を安定させる便利な制度です。しかし、雇用契約書や就業規則の規定内容および実際の運用に問題があると、固定残業代として支払っていた金額が、割増賃金の支払いとして認められない可能性があります。その場合、別途、未払いとなっている割増賃金の支払いが必要となるなど、大きなリスクにつながります。
 本記事では、固定残業代制度を運用するにあたってのポイントと、リスクを防ぐための雇用契約書や就業規則の記載例について分かりやすく解説します。


社会保険労務士法人クリアパートナーズ社会保険労務士寺山_顔写真


▼この記事を書いた人
社会保険労務士 寺山 晋太郎(Shintarou Terayama)
一橋大学社会学部卒業。大学卒業後、鉄道会社にて車掌や運転士といった現場仕事から労務管理・社員教育まで幅広い業務を担当。自身のライフステージの変化により、企業活動における「人」にフォーカスする社会保険労務士に魅力を感じ資格取得。現在は、社会保険労務士として「人」を活かし「会社」を発展させていくことを大切に、幅広い業種・職種・企業規模のお客様の支援に従事。
 


1.固定残業代の仕組みとメリット

・固定残業代制度とは?
 固定残業代とは、実際の残業時間の有無にかかわらず、あらかじめ一定時間分の時間外労働等に対する割増賃金として、毎月定額で支給する賃金をいいます。

・導入のメリットと誤解されがちな注意
企業のメリット: 給与計算実務の簡素化が図れ、人件費予測も立てやすくなる。
従業員のメリット: 実際の残業が少なかった月でも、一定の収入が保障される。

 しかし、ここで最も誤りやすいのが「固定残業代を出しているので、残業代はそれ以上払う必要はない」という点です。固定残業代は「一定時間分までの残業代の前払い」に過ぎず、その時間を超えて残業した場合には追加の支払いが法律上必須となります。
 例えば、20時間分の固定残業代を支払っているに過ぎないのに、30時間の残業をさせた場合、差し引き10時間分の残業代を「別途」支払う必要があります。そのためには残業時間も正しく集計されていなければなりません。


2.固定残業代を運用する3つのポイント

 固定残業代制度のスムーズな運用に当たっては、次の3つのポイントに注意する必要があります。
 
・ポイント�@:給与額において、固定残業代部分とそれ以外の部分が明確に区別できるか
 雇用契約書の記載などにより、実際に支払われる給与額のうち、どこまでが通常の労働に対する部分で、どこからが残業に対する部分なのかを明確に判別できる状態にしておく必要があります。
 例えば
「月額賃金:350,000円(固定残業代含む)」
 という記載のみでは、固定残業代の具体的な金額が判別できないため不適切となります。
 
・ポイント�A:固定残業代が、どの残業に対する対価なのかが明確になっているか
 一口に「残業」と言っても、法定外労働時間(原則として1日8時間・週40時間を超えた分)に対するものもあれば、法定内残業時間(所定労働時間を超え、法定労働時間まで労働した分)、法定休日労働時間(労基法上の法定休日に労働した分)、深夜時間(夜10時〜翌朝5時)に労働した分に対するものもありますから、当該固定残業代が、どの残業の何時間分に対するものであるのかを明確にしておく必要があります。
 
・ポイント�B:実際に計算された残業代が固定残業代を上回る場合は、差額を追加で支給しているか
 固定残業代は、あくまで割増賃金の前払いに過ぎませんので、その支払いをもって全ての残業代が支払い不要ということにはなりません。実際に計算された割増賃金が固定残業代を超過した場合は、不足分を別途支払わなければ労基法違反となるおそれがあります。
 
 

3.【実務チェック】雇用契約書・就業規則の正しい記載例

 上記ポイントを踏まえ、固定残業代を運用する場合における雇用契約書や就業規則の記載例を確認しましょう。
 まず雇用契約書への記載例は以下の通りです。
・基本給:300,000円
・
固定残業手当:60,000円(時間外労働の有無にかかわらず、25時間分の法定時間外労働に対する割増賃金として支給)
・25時間を超える法定時間外労働に対する割増賃金、ならびに法定休日労働・深夜労働に対する割増賃金については別途追加で支給

 また、固定残業代は「賃金」に当たりますが、賃金の決定や計算方法については就業規則に必ず記載しなければならない事項(絶対的必要記載事項)であるため、固定残業代を支給する場合は就業規則への記載も必要です。
 支給対象や設定時間数が、従業員ごとに異なることを前提とした記載例は以下の通りです。
1.会社は、法定時間外労働に対する割増賃金として、従業員ごとに個別に定めた時間分の割増賃金相当額を、固定残業手当として基本給とは別に支給することがある。
2.固定残業手当の支給対象者には、会社は、あらかじめ支給する金額、設定時間および前条に定めた時間外労働等手当との清算方法を別途書面にて通知する。
3.会社は、時間外労働等手当の総額が、前項の固定残業手当を超える場合は、当該超過した額を固定残業手当とは別に支給する。

 上記を骨子として、支給対象者や時間数等をアレンジしていただければと思います。
 
 

まとめ:正しい理解と運用でトラブルのない職場環境を

「固定残業代」制度における3つの運用ポイントと就業規則等への記載例まとめ図 固定残業代制度は、適切に設計・運用されていれば、会社にとっても従業員にとってもメリットのある仕組みです。しかし、誤った運用がなされていた場合、将来的に多大な未払い残業代リスクとなってしまいます。
 
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