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労務コラム
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作成日:2026/10/16
【社労士が解説】トラブルを防ぐ!シフト制労働者の「年次有給休暇」実務ポイント

 社会保険労務士法人クリアパートナーズ 社会保険労務士の寺山です。
 年次有給休暇(以下「有休」とします)は、一定要件を満たした労働者の週の所定労働日数・所定労働時間に応じて付与しますが、それらが厳密に定まっていない、いわゆる「シフト制」の労働者についてはどのように付与すればよいのでしょうか。
 本記事では、シフト制で働く労働者に対する有休の付与について詳しく解説いたします。


社会保険労務士法人クリアパートナーズ社会保険労務士寺山_顔写真


▼この記事を書いた人
社会保険労務士 寺山 晋太郎(Shintarou Terayama)
一橋大学社会学部卒業。大学卒業後、鉄道会社にて車掌や運転士といった現場仕事から労務管理・社員教育まで幅広い業務を担当。自身のライフステージの変化により、企業活動における「人」にフォーカスする社会保険労務士に魅力を感じ資格取得。現在は、社会保険労務士として「人」を活かし「会社」を発展させていくことを大切に、幅広い業種・職種・企業規模のお客様の支援に従事。
 


1.「シフト制」の定義と年次有給休暇の付与要件

「シフト制」とは
 本解説において「シフト制」とは、労働契約の締結時点では具体的な労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務シフト等によって、初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような勤務形態を指します。
 一方、交代制勤務のように、年や月などの一定期間における労働日数や労働時間があらかじめ決まっており、就業規則等に定められた勤務時間のパターンを組み合わせて勤務する形態は本解説で扱う「シフト制」には該当しません。

年次有給休暇の発生要件
 大前提として、いわゆる「シフト制」で働く労働者であっても、要件を満たした場合には有休を与えなければなりません。
 原則的な発生要件は以下の2点です。(下記要件を満たしていなくても、会社の判断で付与することは差し支えありません)
  • 発生要件1: 雇入れの日から起算して6か月間継続勤務したこと
  • 発生要件2: 全労働日の8割以上出勤したこと
  

2.シフト制労働者の付与日数と「労働日数確定が難しい場合」の算定実務

 労働契約時に所定労働日数が明確に定まっていないシフト制労働者の有休管理において、付与日数はどのように考えればいいのでしょうか。

年次有給休暇の原則的な付与日数
 有休の付与日数は、基準日(有休を付与する日)時点で予定されている所定労働日数や労働時間数に応じて算出します。

�@ 通常付与(週所定労働日数が5日以上、または週所定労働時間が30時間以上の場合)
継続勤務年数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数  10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

�A 比例付与(週所定労働日数が4日以下、かつ週所定労働時間が30時間未満の場合)
週所定労働日数 1年間の所定労働日数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
4日 169日〜216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日  121日〜168日 5日  6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日  73日〜120日 3日  4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日〜72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

所定労働日数が算出しがたい場合の実績計算ルール
 所定労働日数が算出しがたい場合は、以下の日数を1年間の所定労働日数として付与日数を算出して差し支えない、とされています。
  • 雇入れ6か月経過時: 雇入れから6か月間の「労働日数の実績」を2倍した日数
  • 雇入れ1年6か月経過後: 前年1年間の「労働日数の実績」

「目安となる労働日数」と「実績」の優先ルール・具体例
 なお、契約時に「目安となる所定労働日数(例:週〇日程度)」を定めている場合、目安と実績のどちらを適用すべきかについては、あくまで実績を下限として考えなければなりません。
  • 目安を用いた算出が実績を上回る場合: 実績に基づいた算出としても構いませんし、目安を用いた算出としても問題ありません。
  • 目安を用いた算出が実績を下回る場合: 「目安となる労働日数」に基づく算出は認められません。あくまで「実績」を用いて算出・付与しなければなりません。

【具体例1】雇入れ6か月経過後の場合
  • 実績に基づく計算(法定基準): 雇入れから6か月間の労働日数実績が「78日」の場合
    • 78日 × 2 = 156日(1年間の所定労働日数とみなす)
    • 比例付与表の「121日〜168日」区分に該当 = 付与日数は5日(これが下限)
  • 目安に基づく計算: 目安として「1週4日程度勤務」と定められていた場合
    • 週4日とみなし、比例付与表に当てはめる = 付与日数は7日
  • 適用判断: 実績に基づく計算(5日)でも問題ありませんが、目安に基づく計算(7日)が実績を上回るため、労働者に有利な取り扱いとしてとして7日を付与することもできます。

【具体例2】雇入れ1年6か月経過後の場合
  • 実績に基づく計算(法定基準): 前年(1年間)の労働日数実績が「96日」の場合
    • 96日を1年間の所定労働日数とみなす
    • 比例付与表の「73日〜120日」区分に該当 = 付与日数は4日(これが下限)
  • 目安に基づく計算: 目安として「1週1日程度勤務」と定められていた場合
    • 週1日とみなし、比例付与表に当てはめる = 付与日数は2日
  • 適用判断: 目安を用いた算出(2日)が実績を用いた算出(4日)を下回るため、目安に基づく付与は認められず、必ず4日を付与する必要があります。

 適切な日数の付与を行うことができましたら、次の段階として実際の取得請求場面や時季変更権の扱い、取得時の賃金計算を解説します。
 

3.有休取得の請求権・時季変更権

 シフト確定後の有休申請に対する対応や、有休取得時の賃金計算はどのように考えればいいでしょうか。

取得請求権と会社の時季変更権
 シフト制労働者であっても、本人が取得を希望する日に有休を請求することができます。会社は原則として、労働者が請求した時季に有休を取得させなければなりません。ただし、シフトが確定していない日や、もともと勤務予定がない日については、その限りではありません。
  • NGな取り扱い: 「勤務シフトを調整して働く日を確定させたのだから、その日に有休を使わせない」といった取り扱いはできません。
  • 時季変更権の要件: 会社が有休の取得時期を変更できるのは、「事業の正常な運営を妨げる場合」(例:同一期間に多数の労働者が休暇を希望し、全員に付与することが困難な場合など)に限られます。単に「代わりの人がいない」「現場が忙しい」といった理由だけでは、労働者が請求した日に有休を使わせない(拒否する)ことはできません。

現場管理者が陥りやすい誤解と労務リスク
 現場の店舗責任者や管理者にありがちなのが、「シフト確定=以降の有休は使用不可」と誤解して申請を拒否してしまうケースです。これは労働基準法違反となる恐れがあるのみならず、労働者の不信感を招き、職場環境の悪化や離職につながりかねません。シフト確定後であっても有休を請求する権利が認められている旨を、全社的に周知徹底することが求められます。


4.有休取得時の賃金計算

有休取得時の賃金計算実務と就業規則の定め
 労働者が有休を取得した日について、会社は賃金を支払う必要があります。主な計算方法は以下の通りです。
  1. 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  2. 平均賃金
  3. (労使協定がある場合)健康保険法に定める標準報酬月額の30分の1に相当する金額※
 どの方法を取るかは、就業規則等であらかじめ定めておく必要があり、有休取得の都度計算方法を変えることはできません。
※健康保険の加入要件を満たしていない従業員には適用できません。

【比較・実践計算例】時給制における賃金算出
 以下の同一条件のもとで、「通常の賃金」と「平均賃金」の双方を算出・比較します。
  • 【設定条件】
    • 時給:1,500円
    • 有休取得日(シフト確定済み)の所定労働時間:5時間
    • 直近3か月の暦日数:92日
    • 直近3か月の労働日数:60日(内訳:5時間勤務の日20日、8時間勤務の日40日)
    • 標準報酬月額 200千円
�@「通常の賃金」による計算
 有休取得日に本来働くはずだったシフトの所定労働時間に対して支払われる賃金です。
  • 計算式: 時給 1,500円 × 5時間 = 7,500円
�A「平均賃金」による計算
 平均賃金は、以下の「原則の計算」と「最低保障額の計算」を比較し、いずれか大きい方の金額を適用します。
  1. 直近3か月の賃金総額の算出:
    • 5時間 × 20日 = 100時間
    • 8時間 × 40日 = 320時間
    • 総労働時間 = 420時間
    • 賃金総額 = 1,500円 × 420時間 = 630,000円
  2. 原則の計算(総額 ÷ 暦日数):
    • 630,000円 ÷ 92日 = 6,847.82円
  3. 最低保障額の計算((総額 ÷ 労働日数)× 6割):
    • (630,000円 ÷ 60日) × 0.6 = 10,500円 × 0.6 = 6,300円
 原則の「6,848円」が最低保障額の「6,300円」を上回るため、平均賃金は6,848円となります。

�B「標準報酬月額の30分の1」による計算
  • 計算式: 200,000円 ÷ 30 ≒ 6,667円
 このように、計算方法によっては結果に少なからず差が生じます。実務上は、計算の手間や労働者のシフト通りの賃金が支払われるという納得感を考慮し、「通常の賃金」を就業規則で選択する企業が多く見られます。自社のシフト形態に最適な方法を選択し、就業規則等に正しく明記し周知しておくことがトラブル防止の鍵となります。


5.シフト制労働者の有休取得のために

 有給休暇を取得しやすい環境を整えるため、会社側が先回りして以下のような環境整備を行うことが考えられます。

課題1:付与日数や申請方法がわからない
  • 【労働者の悩み】 有休を取得できることは知っているが、付与日数や残日数が分からず、申請方法も不明で申請しづらい。
  • 【会社の取り組み例】
    • 労働契約の締結や更新の際に、有休の(予定)付与日、残日数、申請方法について個別に通知する。
    • 給与明細やシフト希望を提出する申請用紙などに付与日数や残日数を記載し、個別に周知する。
課題2:シフト通知が直前で予定が立てづらい
  • 【労働者の悩み】 シフトの通知が直前になると休暇の予定が立てづらいため、早くシフトを出してほしい。
  • 【会社の取り組み例】
    • ある程度余裕をもってシフト案を示すことで、労働者が休暇の予定を立てやすくする。
    • 余裕を持った提示により、有休の取得申請があった場合の再調整の幅をあらかじめ確保しておく。
課題3:同僚への気兼ねから申請しにくい
  • 【労働者の悩み】 自分が有休を取ると、同僚が本来の希望日以外にもシフトに入るのではないかと気兼ねして申請しにくい。
  • 【会社の取り組み例】
    • 交替可能な労働者を探す際、なるべく労働者の希望に沿って調整できるよう、労働する可能性がある最大の日数(例:月曜〜金曜は勤務可能など)について、労働契約締結の際に労働者ごとに意向を確認しておく。
 上記のような取り組みを実施することで、労働者の「有休を申請しづらい」という心理的ハードルを取り除くことにつながります。また余裕を持ったシフト作成や勤務可能日の意向確認は、有休申請に対する調整力を高め、特定の労働者へ負担が偏るのを防ぐことができます。結果として、採用力の強化や人材の定着を図ることができる可能性が高まります。
 
 

まとめ

シフト制労働者の年次有給休暇ガイド図 シフト制労働者も要件を満たせば有休が付与されます。付与日数は所定労働日数や実績に基づき算出し、契約上の目安より実績による算出結果が優先(下限)されます。シフト確定後でも有休請求権は認められ、事業の正常な運営を妨げる場合を除き拒否できません。賃金支払いは通常賃金や平均賃金など就業規則で定めた方法で行い、トラブル防止のため残日数通知や余裕を持ったシフト管理など環境整備が重要です。

 シフト制の有休管理について、ご不明な点ございましたらお気軽にご相談ください。
 
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