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労務コラム
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作成日:2026/10/23
【社労士が解説】勤務間インターバル制度の導入ガイド|就業規則の規程例・検討項目

1.「勤務間インターバル制度」の定義と最近の状況

 深夜遅くまで勤務した場合に、翌日の出勤時刻はどのように運用すればよいか迷うことはありませんか。
 「勤務間インターバル制度」とは、1日の勤務終了後、翌日の始業時刻までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル時間)を設けることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保する仕組みを指します。なお、このインターバル時間には、睡眠時間や生活時間のほか、通勤時間も含まれます。 
 勤務間インターバル制度は、2019年4月から労働時間等設定改善法上の「努力義務」とされていますが、導入企業の割合は2025年の就労条件総合調査によると6.9%にとどまっています。 
 こうした状況を受け、厚生労働省は2026年10月14日、第212回労働政策審議会労働条件分科会の資料を公表し、労働時間法制の具体的課題の一つとして「勤務間インターバル制度」を挙げています。本資料では、より実効性ある導入促進に向けて「法的位置付け」を含め、どのような措置を講ずべきかが論点とされています。
 労働者側が11時間の義務化を求める一方、使用者側は画一的な規制に反対しつつ猶予期間を設けた段階的な導入を主張しており、今後の動向が注目されます。
 そこで今回の記事では、勤務間インターバル制度について詳しく解説いたします。
 

社会保険労務士法人クリアパートナーズ社会保険労務士寺山_顔写真


▼この記事を書いた人
社会保険労務士 寺山 晋太郎(Shintarou Terayama)
一橋大学社会学部卒業。大学卒業後、鉄道会社にて車掌や運転士といった現場仕事から労務管理・社員教育まで幅広い業務を担当。自身のライフステージの変化により、企業活動における「人」にフォーカスする社会保険労務士に魅力を感じ資格取得。現在は、社会保険労務士として「人」を活かし「会社」を発展させていくことを大切に、幅広い業種・職種・企業規模のお客様の支援に従事。
 

2.導入の意義と効果

 労働基準法による時間外労働の上限規制(原則として月45時間・年360時間等)は、1か月や1年単位の「総量規制」であるため、繁忙期など特定の日・期間に労働時間が集中し、日々の休息が不足する事態を十分に防ぐことはできません。
 毎日一定の休息を確保する本制度を導入することで、以下3つの効果が期待できるとされています。
  • 従業員の健康維持・向上:厚生労働省が紹介している研究では、インターバル時間が12時間を下回ると起床時に疲労感が残り、11時間未満の日数が月に3回あると翌月の病気休暇日数が21%増加すると試算されています。十分なインターバル時間の確保は、疲労の蓄積を防ぎ、健康維持に役立ちます。 
  • 従業員の確保・定着:プライベートの時間を確保し、ワーク・ライフ・バランスを充実させることで、魅力的な職場として人材の確保・定着に寄与します。 
  • 生産性の向上:仕事とプライベートのメリハリがつくことで業務への集中度が高まり、品質や生産性の向上が期待できます。 
 

3.制度設計における「7つの検討項目」

 自社の実態に即した勤務間インターバル制度を設計する際、具体的にどのような項目を検討する必要があるのでしょうか。
 制度の導入については、労使の話し合い(労働組合との協議や労働時間等設定改善委員会、安全衛生委員会等)を土台として、PDCAサイクルを回すことが重要です。設計段階では、以下の7項目を検討します。 

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検討項目

設計時の実務ポイント・基準

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適用対象の設定

原則は全従業員(管理職・非正規雇用社員を含む)です。職階や職種等で限定する場合は、理由を明確にして理解を得るように努めます。

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インターバル時間数の設定

睡眠・生活時間に加え、通勤時間も考慮して設定します。目安としては例えば、EU労働指令では「連続11時間以上」と定めています。自社の勤務実態を踏まえ「8時間は最低限、10時間は推奨」といった段階的な導入や職種別の設定も検討します。

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翌日の所定始業時刻を超える場合の取扱い

インターバル時間の確保で翌日の所定始業時刻を過ぎる場合、「重複部分を働いたものとみなす」か「始業時刻を繰り下げる」かを定めます。 ※第4項で詳説いたします。

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適用除外ケースの設定

緊急対応など、やむを得ず休息時間を確保できないケース(適用除外)の有無と範囲、判断手順を定めます。 ※第5項で詳説いたします。

�D

確保に関する手続きの検討

翌日の始業時刻をずらす場合や適用除外となる場合の、上長への申請ルールや周囲への連絡方法を定めます。

�E

確保できなかった場合の対応

確保できなかった場合の理由書の提出や、健康確保措置、業務配分の見直し等の対策を定めます。

�F

労働時間管理方法の見直し

タイムカードやPCのログイン・ログアウト記録等の客観的な方法で労働時間を把握し、インターバル時間を見える化します。



4.翌日の始業時刻を超える場合の取扱いと就業規則への規定例

 深夜残業により、インターバル時間を確保すると翌日の所定始業時刻を超えてしまう場合、実務上は以下�@・�Aのいずれかで対応します。 

【設定条件】
  • 所定労働時間:8時〜17時 
  • インターバル時間数:11時間
  • 前日の勤務状況:8時から23時まで勤務 

【具体例�@】重複する部分を「働いたものとみなす」場合
  • 翌日の始業時刻:前日23時から11時間を確保するため、実際の勤務開始は「10時」となります。 
  • 労働時間の扱い:所定始業時刻(8時)から実際の始業時刻(10時)までの重複する2時間は、勤務していなくても「働いたもの」とみなします。 
この場合の規定例は以下の通りです。
(勤務間インターバル) 
第●条 いかなる場合も、従業員ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、〇時間の継続した休息時間を与える。 
2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、当該始業時刻から満了時刻までの時間は労働したものとみなす。


【具体例�A】翌日の勤務開始時刻を「繰り下げる(後ろ倒しにする)」場合
  • 翌日の始業時刻:11時間を確保するため、翌日の始業時刻を「10時」に繰り下げます。 
  • 労働時間の扱い:始業時刻の繰り下げに伴い、終業時刻の扱いも定めておく必要があります。終業時刻も2時間後ろ倒しにして「19時」とする方法と、終業時刻は変更せず「17時」とする方法があります。 
この場合の規定例は以下の通りです(始業時刻に関する規定例です)。
(勤務間インターバル) 
第●条 いかなる場合も、従業員ごとに1日の勤務終了後、次の勤務の開始までに少なくとも、〇時間の継続した休息時間を与える。  
2 前項の休息時間の満了時刻が、次の勤務の所定始業時刻以降に及ぶ場合、翌日の始業時刻は、前項の休息時間の満了時刻まで繰り下げる。 


5.適用除外の設定ルール

 インターバル時間は、原則として日々確保することが必要ですが、緊急事態や突発的なトラブル等でインターバル時間をどうしても確保できない場合について、「インターバル時間を適用できないケース」(適用除外)として定めることができます。
 例えば、重大なクレーム対応、突発的な設備トラブル・ネットワーク障害、予算・決算・資金調達の業務、災害時などが考えられます。適用除外を想定する場合、上記の就業規則例の第一項末尾に以下のような文言を加えることが考えられます。
ただし、災害その他避けることができない場合は、この限りではない。
 なお、適用除外を設定する場合は「だれが適用除外の可否を判断するのか」「どういった手続きで適用除外とするのか」「適用除外と認める回数に制限を設けるか」などをあらかじめ定めておくことが重要です。
 ただし、社内制度上の適用除外を定めても、時間外労働の上限規制や割増賃金の支払義務、安全配慮義務が免除されるわけではありません。
 併せて、インターバル時間を確保できなかった際の健康確保措置も検討しておきましょう。例えば翌勤務日に有給休暇を取得することの奨励(取得の強制はできません)、インターバル時間を確保できなかった日が属する月のいずれかの日を定時退社日とする、などが考えられます。
 

6.勤務間インターバル制度を形骸化させないための導入・運用ポイント

 制度の形骸化を防ぎ、定着させるためには、会社側が先回りして以下のような環境整備を行うことが有効です。 

課題1:現場の実態に合わず、業務が回らなくなる不安がある
  • 【現場の悩み】 働く時間が短くなり業務が回らなくなるのではないか、マネジメント負担が増すのではないかと現場が不安を感じる。 
  • 【会社の取り組み例】
    • 本格導入前に「試行運用(テスト運用)」期間を設け、現場の意見を踏まえて、確実に守れる時間数や手続きへ調整する。 
    • 経営トップからのメッセージ発信に加え、部署単位で「止める業務・減らす業務」を洗い出す業務仕訳やIT化を進め、管理職の評価項目に働き方改革の達成度を組み込む。 

課題2:インターバル時間の確保状況や翌日の出社時刻が把握しづらい

  • 【現場の悩み】 誰が休息時間を確保できていないか瞬時に分からず、翌日の始業時刻がずれると、社内の連絡調整に支障が出る。 
  • 【会社の取り組み例】
    • 勤怠管理システムを改修し、深夜退勤時や時間数不足が見込まれる場合に、本人・上長の画面へアラートを自動表示する仕組みや、一定時刻でのPC強制シャットダウンを導入する。 
    • 共有カレンダーやチャットツール等で翌日の出勤予定時刻を「見える化」する。
    • 直行直帰が多い職種では、自宅の出発から帰宅までをモバイル端末で記録する「健康管理時間」を導入し実態を把握する。 

課題3:顧客や取引先への対応遅れが懸念される

  • 【現場の悩み】 翌朝の出社を遅らせることで、顧客や取引先への対応に支障が出るのではないかという懸念がある。  
  • 【会社の取り組み例】
    • ホームページでの告知や文書送付、個別訪問を通じて、取引先に制度の趣旨を説明し、計画的な発注への協力を求める。 
    • 翌朝の担当者不在時は、代表窓口で一次対応して他社員へ引き継ぐ体制や、複数人担当制への移行、営業段階での納期調整ルールを整える。 
 

まとめ

 勤務間インターバル制度は、終業から翌日の始業までに一定時間以上の休息を確保する仕組みであり、時間外労働の上限規制だけでは防げない日々の疲労蓄積や過重労働を防止し、健康維持・人材定着・生産性向上を実現します。
 2026年10月の労働政策審議会でも「11時間」を軸とした法的位置付けや段階的導入の議論が進んでおり、企業には早めの対応が求められます。導入時は労使協議のもとで対象範囲や時間数、翌日始業時刻の扱い(「働いたものとみなす」か「繰り下げる」か)、適用除外と健康確保措置を設計して就業規則に明記するとともに、試行運用やシステムによる見える化、業務効率化を一体的に進めることが定着の鍵となります。 
 勤務間インターバル制度の設計や就業規則の改訂について、ご不明な点ございましたらお気軽にご相談ください。
 
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